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サトウキビの齲蝕リスク

2007年04月16日

ザワザワ・・で始まる森山良子の“サトウキビ畑”の歌が流行していた。サトウキビは、沖縄や鹿児島の南西諸島で栽培されており、イネ科の植物で甘蔗(かんしょ)とも呼ばれている。これを裁断・粉砕・圧搾し濃縮したものが黒糖(黒砂糖)。不純物などを取り除き精製したものが砂糖である。歯科医師としては、齲蝕の原因となるため、患者さんには勧められない。しかしサトウキビの硬い皮を剥き、中の繊維質を歯でかじると、甘い汁が出てくる。これだけ口を動かせ唾液が出れば、当然自浄作用が働くだろう。唾液の緩衝作用は、水の十万倍。それだけ口の中を中性に戻す性質が強いと言うことだ。それでは、サトウキビをかじることで、どの程度齲蝕リスクを軽減できるのだろうか?歯科医師として是非知りたいところである。

さて話は代わるが、風葬という言葉をご存知だろうか?遺体処理については火葬、土葬、鳥葬、風葬、洗骨葬、水葬などがある。風葬は、最近まで沖縄や鹿児島の南西諸島に残ってきた葬制である。死後、遺体を小屋や洞窟に置き亡骸を弔っていた。肉親は、土中に埋葬することが、耐え忍びなかったのだろう。しかし、遺体が腐敗し悪臭を放つことは他人迷惑であり、伝染病の流行にもつながる。そこで明治十年に風葬の禁止令が出た。この影響であるかは、詳しく知らないが・・・風葬の一種とも考えられる洗骨葬がある。七回忌・十三回忌に、土中より遺骸を掘り出し海水で洗い、人里離れた場所で骨を祭るのだ。ある島の郷土史家に、この場所に案内していただいた。車は、街中より15分ほど走った小道で止まる。両側は深い樹木で覆われ、このような場所に風葬跡があるとは思えない。しかも暖かい時期は、猛毒を持つハブが出没すると言う。清めの塩をまき手を合わせて、森に入る。洞窟には、おびただしい数の頭蓋骨があった。昭和・大正・明治、いやそれ以前の骨もたくさんあるのだろう。多くの骨に混じり、泉門も閉じきっていないもの、乳歯列のものもある。かわいそうに・・夭折したのだろう。職業柄、どうしても歯に眼が行ってしまう。硬い食物を食べていたのだろう咬耗が激しい。歯を使って生きぬいてきた証だ。しかしどの骨を見ても齲蝕は、ほとんどみられない。歯石すら付いていない。また歯周病で歯を失うことも少なかっただろう。歯がない部分にも歯槽窩は残っている。生前に歯が抜けていたら歯槽窩が吸収されないはずだ。おそらく死後に歯が抜け落ちたのだろう。頭蓋骨の主が、静かに歯の自慢をしている。この様子を撮影させていただいた。是非、ご覧いただきたいと思うが、残念ながらここに掲示する権利を私は持っていない。

さてこの島。昔からサトウキビの大産地であった。産地であれば、もっと齲蝕が多くても・・・と思う。サトウキビをかじることで溢れるように唾液が出て、齲蝕予防につながったとしか考えられない。さて齲蝕にならないように、歯を磨く。砂糖を控える。これは、“○○にならないように、○○する。”といった守りの齲蝕予防の概念だ。よく噛んで唾液を出して、口腔内を清潔にすると言った攻めの予防論も必要な気がしてならない。

参考:誤解のなきように付け加えておく。
*サトウキビには食物繊維が多量に含まれ、砂糖に比べ齲蝕誘発能は低いが、歯科医師の立場からは推奨することはできない。
*サトウキビの汁を飲用は、隣接面齲蝕につながるだろう。
*サトウキビを主たるエネルギー源ではなく、間食の一部として考える。
 
 
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