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冬季オリンピックと歯科治療 ~その2~

2006年03月06日

■□ 転ばぬ先の入れ歯 ■□

トリノ冬季オリンピックが終わり、寝不足から開放された方も多いことと思う。
さて、有名ジャンプ選手の話題を一つ。
数年前の日本歯科医学会大会でのシンポジウムで聞いた話。

ある有名選手は、ジャンプでまっすぐに飛ぼうとするのだが、どうしても少し身体がズレてしまう。これでは飛距離が伸びない。左右の筋肉のバランスが悪いのかと思い、弱い方の筋力トレーニングをしたが思ったような結果が出ない。
その後、歯が原因であることがわかった。

さてその原因とは、何だろう?
1:齲蝕
2:咬合の問題
3:歯周病

その選手は、咬合に問題があったのだ。咬合のズレが、体のバランス能力につながることがわかる。今回のオリンピック壮行会の写真では、咬合は治してあるようにみえた。しかし残念ながら、失格に終わった。また次のオリンピックに期待したい。

そう言えば、日本唯一の金メダリスト荒川選手は、きれいな歯をしていた。
フィギュアスケートは、スピードの強弱のみならず高度のバランス能力も必要とされる。きっと咬合も大きく関係しているのだろう。

さて、ここで実験をしてみよう。
まず目を閉じて立つと、体が揺れることがわかる。目を閉じることで、バランス能力が低下するのだ。次に目を閉じたまま、つま先立ちをしてみる。そうすると、無意識に軽く歯を当てている。歯は体のバランス能力に影響を与えていることが説明できる。

さて、赤ちゃんは、ハイハイをする。これは四足歩行である。その後、つかまり立ちをする。これは三足歩行だ。そして、二足歩行となる。ところが、年齢とともにバランス能力が低下する。杖を突いて歩くのは三足歩行であり、四足歩行の寝たきりとなる。

ところで歯がないと、人ごみの中を歩きにくいように思う。急に立ち止ったり、方向転換しなければならない。もし、誰かと衝突したら、倒れてしまうかもしれない。現在、転倒による骨折が、寝たきりの主要な原因となっている。このように思い始めると、街に出かけにくくなる。当然、生活範囲も狭まる。これも寝たきりの、第一歩となる。

でも歯があれば、上下の歯を軽く当て,バランスをとることができる。入れ歯は、杖の代わりとなる。“転ばぬ先の杖”ではなく、“転ばぬ先の入れ歯”なのである。