MAIL MAGAZINE メールマガジン

宇宙飛行士と歯の話 ~その1~ —宇宙で歯が痛くなったなら—

2005年11月07日

1957年旧ソ連がスプトーニク一号を打ち上げた時から人類の宇宙開発の歴史は始まった。

それから約50年・・。現在では毎年のように日本人宇宙飛行士が、スペースシャトルに搭乗し宇宙へ飛び立っている。 (図1)(図2)
 
 

 
 


 
 
遥か宇宙の彼方への旅。想像するだけでロマンがかきたてられる。
さて宇宙飛行士は、むし歯があるとなれないといわれている。
どうしてだろうか?
宇宙では、むし歯があると歯が痛くなりやすいのだ。
激痛に襲われたらならば、任務どころではあるまい。(図3)
 
 

 
 
そもそも歯が痛くなる理由は、むし歯が進み神経の炎症によってガスが出る。
この圧力によって痛みを感じる。
これは、火山の噴火にたとえることができる。
すなわちマグマの圧力が高まると,地質が薄いところに噴火する。
むし歯で穴があいた部分が噴火口なのだ。
歯の治療は、地質の弱いところを補強することに他ならない。

宇宙飛行士の毛利衛氏は、小さなむし歯が4本あり治療されたそうだ。
どうやら小さなむし歯であれば大丈夫なようだ。
宇宙で歯が痛くなる理由として、気圧が低くなると相対的に歯の内部の圧力が高くなる。(図3)
空気は5000メートル上がるごとに、半分になる。
ちなみに宇宙服の中は、0,3気圧だそうだ。
だから歯が痛む。
これは、飛行機でも同じだ。
飛行中は、約20%気圧が低下する。
その影響で、スナック菓子の袋が膨れたり,封を開けたシャンプーも漏れだす。
だからパイロットやスチワーデスにとって、歯の治療は重要なのだ。
航空会社の広報室に問い合わせてみた。
地上でわずかな痛みであれば、上空ではさらに痛くなる。
だから国際線など長時間の飛行においては、かなりの苦痛となる。
ひどい時は、乗務員の交代もありえるそうだ。

それでは、もし宇宙で、親知らずでも痛みだしたらどうするのだろう?
まず痛み止めの薬を飲む。
それでも効かなかったら、他の宇宙飛行士が歯を抜くそうだ。(図4)
そのため宇宙飛行士は、歯を抜く訓練までしているのだ。
 
 

 
 
では総入れ歯なら宇宙飛行士になれるだろうか?
答えは、ノーである。
NASAの規定によると、もし入れ歯が壊れた場合、普通食を噛み、明確に発音できることが必要なのだ。
いつの日にか、誰もが宇宙旅行を楽しめる時代が訪れるだろう。
その時まで、困らない歯を維持したいものだ。

元軍医から聞いた飛行兵と歯痛の話。
片道だけの燃料を積んで飛び立った特攻隊機。
ある隊員が、歯痛のため基地へ引き返してきた。
治療材料にもこと欠いていた時代,歯を抜いて再び飛び立っていったとのこと。
気の毒に。戦争とは、かくも残酷なものである。

 

写真提供:宇宙科学研究家の若居 亘先生
図1 スペースシャトルの打ち上げ
図2 本年スペースシャトルに搭乗された野口宇宙飛行士
図3 宇宙では気圧が低くなり歯が痛み出す。歯が痛むと任務に差しつかえる。
図4 ロシアの宇宙船の緊急医療セット 抜歯鉗子が入っている。