2005年02月07日
今年もインフルエンザのシーズンである。
罹ると、診療にならないばかりでなく、患者に感染させる恐れもある。
インフルエンザの予防といえば、マスクがあげられる。
ところでマスクの網の目を、トンネルの大きさにたとえると、インフルエンザウイルスは、アリの大きさにも満たない。
ならばマスクは、本当に予防効果があるのだろうか?
さてモンゴルは、零下40度まで達する寒さである。
凍ったバナナで釘を打つことができる。
ところが、この冷たい空気を鼻から吸っても、咽頭部では体温付近まで上昇するという。
わずか10cmで、60度以上も空気温が上昇するのは、鼻腔内の毛細血管により加温されるためだ。
ところで毛細血管には、もう一つの働きがある。
それは乾燥した空気を加湿することだ。
驚くなかれ、ヒトの鼻腔内からは1日約1リットルの水分が出ているという。
そもそも肺でのガス交換は、湿度100%の状態で行われる。
これは、魚類が水中でエラ呼吸をしていることを考えれば理解しやすい。
肺は、乾燥に弱いのだ。
加湿するメリットは、他にもある。
インフルエンザウイルスは、湿気に弱いのだ。
ウイルスは、20度・湿度30%の状態では、6時間後約50%のウイルスが活性を示す。しかし、湿度60%になると95%まで不活性化される。
このことからマスクの予防効果は、呼気中の水分により得られることがわかる。
ヒトは、マスクの代わりになるものを体に備えて入る。
それは、鼻で呼吸することだ。
一方、口で呼吸すると風邪を引きやすい。
直接、口から空気が入ると体の防御機構が働かない。
ヒトの体は、かくなる仕組みも持っている。
※参考文献
1:臼田篤伸著 こんなに効くぞ ぬれマスク 農山漁村文化協会“風邪の予防には,ぜひお勧めの一冊です”
2:岡崎好秀 謎解き 口腔機能学 クインテッセンス出版
図1:気温が-30℃では,バナナで釘を打つことができる。
図2:鼻腔内の毛細血管により,吸気が加温・加湿される
図3:インフルエンザウイルスは,乾燥に強く,湿気に弱い
( 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/ )