2004年12月20日
講師の方が「8020運動とは、80歳になっても20本の歯を残こすことを目標にしています。20本の歯があると、おいしく食べることができ、健康で豊かな生活につながります。そのためにも、普段からの歯の手入れが重要です。」と話された。
その瞬間、お年よりの顔が、一瞬暗くなった。
講師は、そのことに気がつかず、話しを続けておられた。
現在80歳の歯の数は、平均5本であり、60歳で20本をきっている。
歯をすでに失い80歳で20本が達成できない方は、この話どのように聞いているのだろう?
きっと嫌な思いをされているに違いない。
ところで、ある歯科医が面白いことを言っておられた。
「新8020運動とは、80歳になっても20歳の方と同じ食生活ができること。すなわち家族と一緒に食事をすることです。」
なるほど!それだったら、すでに歯を失っていても、歯の治療をすることで達成できる。
さて“家”の語源をご存知か?家の“イ”は接頭語。“エ”と言う字は、古くは“ヘ”と発音していたらしい。“へ”とは、“へっつい”という意味だ。
“へっつい”とは、“へっつい幽霊”“へっつい盗人”等の落語にもあるように、台所にある“竈(かまど)”の意である。つまり家の語源の中には、竈という意味が含まれている。
竈は、食物を煮炊きする設備であるが、それが家族の拠り所であったことから、一家・世帯や家族・財産の意を持つようになった。
“同じ釜の飯を食う”という表現が示すように、まさに家族一緒に食卓を囲むことが“家”の語源なのである。
結婚式の披露宴で一緒に食事を楽しむこと。それは、親族や職場の上司、そして友人と、一種の運命共同体をつくり、暖かく二人を見守るということだろう。
このように考えると、家族が一緒に食事することが、いかに重要なことであるかがよくわかる。
そう言えば以前、子ども達の食生活を風刺した“コ食”という言葉があった。
単品を食べる“個食”。子どもだけで食べる“子食”。一人で食べる“孤食”。
外食ばかり戸外で食べる“戸食”。固定化したメニューの“固食”。むなしさの“虚食”。寂しい“コ食”のオンパレードである。
きっと“コ食”は、寝たきりのお年よりを抱える家でも進んでいるだろう。
一人だけ別メニューの食事を作ることは、家族にとっても負担に違いない。
やはり食事は、家族一緒に食べたいものである。
8020運動の達成が手遅れであっても、歯の治療を行うことで、“新8020運動”の達成は可能なのである。