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おもしろ唾液学~その4 【「唾液緩衝能テスト(CAT21バフ)」について】

2004年01月19日

前回(ビバリーメール第64号、2003年12月15日配信)、唾液の緩衝作用について述べたが、今回は歯の防御因子を測定する唾液緩衝能テスト(CAT21 バフ)について紹介する。(図1、図2)

 

図1

図2

 

●内容物:本キットには、チューイングペレット(ガムベ-ス)、テストチュ-ブ、唾液採取用容器、スポイト、判定用色見本、結果通知用用紙から構成されている。

●使用方法:

【1】チューイングペレットを3分間噛み、刺激唾液を計量カップ(5ml)入れる。

 
【2】3分間の刺激唾液の流出量を測る。

┌──────────────┬──────────────┐
│              │  むし歯になりやすさ   │
├──────────────┼──────────────┤
│2.0ml以下         │  非常に危険(高リスク) │
├──────────────┼──────────────┤
│2.1~5.0ml       │  注意(中リスク)    │
├──────────────┼──────────────┤
│5.1ml以上         │  やや低い(低リスク)  │
└──────────────┴──────────────┘

 
【3】唾液をスポイトでテストチューブの角のラインまで(0.5ml)入れる。(図3)

 

図3

 

【4】蓋をしてよく振る。(チューブの底の、試薬が完全に溶けるまでよく振る。)

【5】唾液の色が変化する。色見本に従って判定する。(図4)

 

図4

 

【6】さらに唾液をテストチューブの中央のラインまで(1.0ml)加え、よく振り、色見本に従い判定する。(図3、図4)

 
┌───────────────┬──────┬─────────────┐
│               │ 唾液緩衝能  │ むし歯になりやすさ   │
├───────────────┼──────┼─────────────┤
│赤 色(pH5.8~7.0)   │ 強 い    │ やや低い (低リスク) │
├───────────────┼──────┼─────────────┤
│橙赤色(pH5.0~5.5)   │ やや弱い   │ 注  意 (中リスク) │
├───────────────┼──────┼─────────────┤
│黄 色(pH5.4~4.8)   │ 弱 い    │ 非常に危険(高リスク) │
└───────────────┴──────┴─────────────┘

 
※注:pH6.5以上では赤紫色となり、これ以上のpHにおいて色変化は起こらない。

 
原法では、最初から1.0mlで判定しているが、まず0.5mlで判定し、続けて1.0mlで判定したほうが、動機づけとして有効である。
(本試験法は、幼稚園児で約50%が低リスクとなるように調整されているため、唾液腺の発達の関係により、成人では低リスク群が増加する)

 
【7】 結果通知用のパンフレットに記入し、患者さんに渡す。(図5 )

 

図5

 

幼稚園年長児における判定結果とdf歯数との関係について調べたところ、低リスク群(高緩衝能)では、2.28歯に対して高リスク(低緩衝能)では5.50歯となり、リスクが高くなるにつれdf歯数が増加することがわかる。(図6)

 

図6

 

なお同様の結果が中学生でも認められている。

 
ちなみに、本テストチューブには乳酸が添加されており、蒸留水を入れるとpH2.0になるように調整されている。

ここに刺激唾液(1.0ml)を入れ、緩衝作用によりpHが4.5以下までは黄色(高リスク)、pH5.2で橙赤色、5.8以上にまで上昇すると赤色に変化する。

唾液緩衝能が高い(赤色)ほど、中性に戻りやすいのでむし歯になりにくい。

一方、緩衝能が低い(黄色)ほどむし歯になりやすいと考えられる。(図7)

 

図7

 

ちなみに計算上では、テストチューブを蒸留水で薄めて黄色(pH4.5)にするためには、100ml、橙赤色(pH5.5)にするためには約510ml、赤色(pH6.0)にするためには3,200ml、赤紫色(pH6.5)にするためでは10,000mlの水を加える必要がある。

単純に考えれば、高緩衝能(pH6.0)の唾液は、蒸留水の3,200倍の緩衝作用が存在することになる。

さてあなたの唾液緩衝能はいかがだろうか?