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おもしろ唾液学(新シリーズ)~その1 【養生訓に学ぶ歯の話】

2003年11月17日

養生訓が、いま静かなブームになっている。

この本は三百年前に江戸時代の儒学者 貝原益軒によって書かれたもので、“接してもらさず”や“食い合わせ”があまりにも有名である。

益軒は、生来虚弱で病気に苦しんでいたが、健康法を実践したため85歳の長寿を得た。

ところで益軒の時代と現在は、共通点が多い。

養生訓が出版されたのは、庶民生活が安定した江戸時代中期。それまでは、飢えや戦争のため明日をも知れぬ命であったが、天下泰平の時代になり、やっと庶民も老後のことを考える余裕が出てきた。

さて現在、生活が豊かになり、次々と病気も克服され、日本人の平均寿命は約八十歳、わずか五十年の間に三十年も延びた計算になる。

誰もが寿命の延びたぶん、健康で楽しい生活を送ることが出来ると思っていた。

しかし、糖尿病・高血圧などの生活習慣病が急増し、これがきっかけとなり、老後を寝たきりで過ごさなければならない方が急増している。

益軒は、長い人生を健康で楽しむための術を説いていた。これが養生訓のブ-ムとなっている背景である。

さてこの中には、歯や口にまつわる健康法についても述べられている。

“古人曰く「禍(わざわい)は口より出て、病は口より入る」”病は口から入る食物により起こるので、その入口には留意する必要がある。

“歯の病は胃火(いか)ののぼるなり。”
歯の病は、胃腸の病と関係が深い、歯が悪いと消化不良を引き起こす。

“一日に歯を35回、カチカチ鳴らすと、歯の病気にならない。”
歯を鳴らすことは、禅宗の健康法であり、歯や歯グキを鍛え、齲蝕や歯周病の予防になる。
 
“つま楊枝で歯の根を深く刺してはいけない。歯の根が浮いて動きやすくなる。”
爪楊枝は、当時の歯ブラシである。しかし歯グキに深く入れて傷つけると、腫れて痛むこともある。

“朝、ぬるま湯で口をすすいで、昨日から歯にたまっているものを吐き出し、干した塩で上下の歯と歯グキを磨き、温湯で二十・三十回口をすすぐ。さらに口に含んだ湯を粗い布でこし、お碗に入れる。
 
 
さてここで問題である。養生訓には、口をすすいだ湯がある薬になると書か
れている。その“薬”とは、以下のどれだろう?

 1:傷薬
 2:目薬
 3:毛生え薬

この答え、次回までのお楽しみにしておこう。