2016年11月21日
おいしそうなハンバーガーやフライドポテト、それにコーラ。
現在、これらを飲食すると“トウモロコシ”を食べたことになるという。
どうしてだろう?
コーラの甘味である異性化糖は、トウモロコシから作られることは述べた。
それでは他の食物はどうなのか?
ここでその歴史的背景について触れてみる。
戦後の食糧難の時代、日本政府はイモ類の生産を奨励していた。
そして食糧難が一段落すると、人々は甘い味を求めだした。
しかし外貨不足のためサトウキビを輸入することが困難であった。
そこで日本で異性化糖が開発された。
当時、アメリカはキューバ革命により、サトウキビの輸入が途絶えていた。
そこで異性化糖に目をつけた。
アメリカ政府は、膨大な助成金によりトウモロコシの生産を奨励した。
おかげで、アメリカは世界最大の生産国となったのだ。
さて、トウモロコシはコメやコムギと並び三大穀物の一つである。
さまざまな気候に適応し、広い地域で生育できる。
しかも、光合成の効率に優れており収穫率も高い。
トウモロコシ1粒から約800粒の収穫が可能だ。
このような経過から、トウモロコシの用途は一気に広がっていった。
さて、日本では茹でたり焼いたりするスイートコーン(甘味種)を思い浮かべる。
しかし世界的には、直接食べる分は4%しかない。
ほとんどが、家畜用の飼料やコーンスターチの製造などに利用される。
なかでも飼料用には、全生産量の64%を占めると言う。(2009年)
ここにタンパク質として大豆粕や魚粉などを加えて与えるのだ。
さて現在、日本では年間一人当たりコメ58.5kg、コムギ31.8kgを食べている。
一方、トウモロコシは約100kgも消費していると言う。(平成21年度 食糧需給表)
そう!
主食の穀物以上のトウモロコシを、ウシやブタ、ニワトリを介して食べているのである。
ハンバーガーの牛肉は、トウモロコシで育ち。
フライドポテトの油は、コーン油(トウモロコシ)で揚げられ。
コーラの甘味は、トウモロコシを原料とした異性化糖で作られている。
現在の食肉文化は、トウモロコシにより成り立っていることがわかる。
[参考]酒井伸雄:「文明を変えた植物たち コロンブスが遺した種子」NHK出版、2011年
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/