2016年10月03日
異性化糖に含まれる果糖は、低温で甘く感じるためガムシロップや清涼飲料水で多用される。
これは果糖の多いブドウやスイカは、冷やすと甘く感じることからも理解できる。
異性化糖は、冷蔵庫や自動販売機の普及により清涼飲料水が飲まれるようになり世界中に広まった。
飲み物以外でも、氷菓やシュークリームなど冷やして食べるお菓子に使われる。
さらには、缶詰やパンみりん風調味料にも利用されているという。
さて砂糖の精製は、サトウキビやビート(甜菜・てんさい)を細かく裁断し汁を絞って煮詰める。
さらには不純物を取り除くなど複雑な工程が必要だ。
一方、異性化糖はトウモロコシ・ジャガイモ・サツマイモのデンプンを原料とする。
これらのブドウ糖を果糖に変える異性化酵素が開発され、工業的に大量生産が可能になった。
砂糖の不足していた第2次世界大戦中、各国はこの酵素を作るために鎬(しのぎ)を削っていた。
この開発競争の勝者は我が国であった。
現在、異性化糖の生産量がもっとも多いのはアメリカである。
世界最大のトウモロコシの生産国であるから安価で手に入る。
おまけに工業的にできるので、砂糖に比べ価格が3割も安い。
このような背景から、日本でも異性化糖の使用量が砂糖を追い越したという。
さて歯科医師として気になるのは、異性化糖とう蝕との関係である。
ミュ-タンス連鎖球菌は、GTF(注1)という酵素により砂糖をブドウ糖と果糖に分解する。
この際に出るエネルギーにより、ネバネバ物質の不溶性グルカンが生成される。
これが歯面に付着してう蝕の初発に関係する。
しかし異性化糖の場合、最初からブドウ糖と果糖に分かれている。
…だとすれば、砂糖と異性化糖では不溶性グルカンの生成に差が出ることになる。
もちろんミュ-タンス連鎖球菌は、どちらからでも酸を作り出すことができる。
筆者は、細菌学に関して門外漢だ。
しかし学問的には、グルカン生成の分だけう蝕誘発能が異なる可能性がある。
もう少し調べようと思ったが、残念ながら両者を比較した論文を見出せなかった。
実際的に、清涼飲料水の砂糖と異性化糖を分けて比較など不可能である。
従って、一般的に清涼飲料水を控えるという指導が適切だろう。
しかし…である。
現在、世界的に異性化糖が別の次元で問題になっている。
続く
(注1)グルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase)
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/