2016年02月15日
唾液とう蝕罹患状態との関係について論文を検索した。
しかし、刺激唾液流出量とは見当たらない。
わずかに成人の根面う蝕との関係だけである。
どうして刺激唾液量は、う蝕とは関係しないのだろう?
それは刺激唾液の分泌が、食事時間に限られるためだ。
例えば、5歳児では、1日の睡眠時間は約9時間20分。
この間は、唾液はほとんど分泌されない。
“う蝕は夜に作られる”の言葉は、夜間の唾液分泌と関係が深い。
朝の口臭の原因も、唾液分泌の減少による菌の増殖である。
次に、食事やオヤツに費やしている時間は約1時間20分。
この時、刺激唾液が分泌される。
残りの13時間20分は、安静時唾液のみとなる。
この割合は、成人で睡眠時間が多少短いものの大差はない。
刺激唾液の分泌時間は、安静時唾液の1/10に過ぎないのだ。
従って、刺激唾液は日常の状態を十分に反映しているとは言い難い。
一方、安静時唾液は、う蝕と関係があるかもしれぬ。
しかし、量が少ないために採取に時間がかかり疫学的研究が難しい。
さて唾液分泌量とう蝕とは関係ないと述べたが、一部例外もある。
それは、何らかの理由で唾液流出量が極端に低下した場合である。
例えば、GVHD(移植片対宿主病)で唾液腺が損傷を受ける。(注1)
口腔内は強度の乾燥状態となり、短期間に多発性う蝕を引き起こす。
その他、放射線治療によっても損傷を受ける。
唾液腺が破壊されると、唾液による歯の防御作用がまったく働かない。
そのため、酸蝕症の様相を呈し歯は溶かされ原形をとどめられない。
また唾液が分泌されないと嚥下困難がなる。
これでは食事ができない。
さらに口内炎による疼痛が、食欲不振を引き起こしQOLの低下につながる。
いかに、歯は唾液により守られているかよくわかる。
(図3)http://okazaki8020.sakura.ne.jp/cgi-bin/housyasen.jpg
※衝撃的な画像なので、自己責任でクリックしていただきたい。
さて、う蝕と刺激唾液分泌量との間には関係がないと述べた。
しかし、唾液緩衝能との間には関係性が求められる論文がある。
そこで、唾液緩衝能テストを作ることにした。
(注1)
GVHD(移植片対宿主病):生体肺移植や造血幹細胞移植など移植後に起こる移植片対宿主病(graft versus host disease)は、
移植片中に含まれるドナーT細胞がホスト抗原を非自己と認識しホストの臓器を攻撃する病気である。
歯科領域においても、唾液腺の破壊を伴いう蝕など口腔疾患とも関係が深い。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/