2015年09月24日
養生訓は、儒学者である貝原益軒によって300年前に著された。
当時、“健康”と言う言葉がなかったので、さしずめ“健康訓”と考えれば良いだろう。
益軒は、生来病弱であったため、古今東西のさまざまな健康法を学び実践した。
そのおかげで当時としては、画期的な85歳の長寿を得たという。
(図2)
益軒が活躍したのは、江戸時代が安定期に入った元禄時代である。
この頃、庶民においても衣食住が足り、白米や砂糖が口に入るようになった。
これより前は、戦争や飢餓のため明日のわが身を考える余裕がなかった。
しかし天下泰平の世の中になり、庶民も初めて明日のわが身を考えることができるようになった。
かくして、誰もが“自分の健康”を意識する時代になった。
売薬が大量に製造されるようになり、富山の薬売りなどの行商が全国に広がった。
同時に健康ブームになり、多くの健康書が出まわった。
おかげで養生訓は、江戸時代を通じて大ベストセラーとなった。
さて、現在も養生訓ブームと言われる。
インターネットの本のサイトで“養生訓”で検索すると、なんと116件がヒットした。
タイトルに“養生訓”を入れると本が売れるのである。
現在もまた養生訓ブームなのだ。
しかし、どうしてなのか?
我が国では、たった20年位前まで平均寿命さえ長ければ、健康な老後が待っていると考えられてきた。
しかし、生活習慣病のため、人生の後半を寝たきりで過ごす方々が急増している。
生活習慣病は、残念ながら完治することはない。
そこで、食生活に気をつけたり、運動を心がけるようになった。
まさに“健康増進法”は、これを目的とした法律と言える。
さて益軒は、歯や口にまつわる健康法についても書いている。
(図3)
例えば、古人曰く
「禍(わざわい)は口より出て、病は口より入る」
悪口は災いの元であり、食中毒などの病気は、口から入る。
「歯の病は胃火(いか)ののぼるなり。」
歯は、胃腸の病と関係が深く、よく噛まないと消化不良を引き起こす。
「一日に歯を35回、カチカチ鳴らすと、歯の病気にならない。」
これは禅宗の健康法であるが、よく噛んで食べるという意味だろう。
「つま楊枝で歯の根を深く刺してはいけない。歯の根が浮いて動きやすくなる。」
爪楊枝は、当時の歯ブラシだが、歯グキを傷つけると腫れて痛む。
さらに唾液は、吐いてはいけない。
飲み込んで内臓を養う。
などと書かれている。
さて、この他に益軒の健康法として、驚くべき一文が書かれてあった。
続く
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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