2014年10月16日
“食べ物を一口30回噛もう”という「噛ミング30(カミングサンマル)運動」がある。
また噛むことの効用については、「ひみこの歯がいーぜ」などの標語もある。
しかし、噛む健康法については“フレッチャーイズム”以上のものはない。
なぜなら、この運動の提唱者である“ホーヌス・フレッチャー”氏が、自ら実践しその体験談を世界中に広めたからである。
フレッチャー氏は1849年生まれのアメリカの実業家。
時計屋で大成功をおさめた大金持ちであった。
たいへんな美食家で、邸宅には5人ものコックを雇っていたという。
そして毎日のように、世界中のおいしいご馳走を食べていた。
しかし40歳にして、頭の毛は真っ白。
身長は170センチなのに体重は100キロ近くもある。
かつては仕事で世界中を飛び廻っていた。
しかし、最近では机の前に座り、体を動かすこともない。
しかも最近は体がだるくてしかたがない。
食欲もないし、新しいことをする意欲も湧かない。
体調は、悪くなる一方であった。
会社を経営しているので何か身にあったら、従業員を路頭に迷わせることになる。
(図3)
そこで保険に加入しようと思い保険会社に行くと、まず病院で検査を受けるよう言われた。
しかし医者からは、現在の体調では加入することができないと診断された。
この一言。
フレッチャー氏にとって大ショックであった。
そこで体調が悪くなった原因について考えた。
そこで氏は健康を取り戻すため、一大決心をしてヨーロッパに渡った。
さまざまな名医の元で病気の治療をしたが、体調は良くなるも体型は元に戻らない。
栄養学者にも相談したが、納得できる答えを得ることができなかった。
こうして、失意のうちにアメリカに帰国した。
そんなある日。
そこで、
“食べ物はよく噛んでドロドロになるまで飲み込まない。”
“本当に空腹感の湧いた時だけ食べる。”
“新鮮なものをシンプルに調理して食べる。”
“ゆっくり味わいながら食べる。”
数ヵ月後、氏は、健康な時の自分に戻ってきたことを自覚した。
そして5ヵ月後には、体重は28キロ減り71キロに、腹囲は90センチになった。
おまけに、体重が減っても体力は低下せず、若いころのように筋肉もついてきた。
しかも念願の生命保険に加入することができたのである。
フレッチャー氏は、よく噛むことが重要なことに気がつき、世界中で“噛み噛み健康法”を説いて廻りはじめた。
(図7)
つづく
注1:フレッチャーイズム参考文献:
・フレッチャーさんの『噛む健康法』 市来英雄著 医歯薬出版
・絵本 ゆっくりゆったりよくかんで フレッチャーさんの大発見 市来英雄著 医歯薬出版
・Horace Fletcher :Fletcherism : how I became young at sixty,1913.
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/