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捕食と咀嚼 その【1】

2014年07月18日

ヒトには前歯と臼歯がある。

なぜ前歯と臼歯があるのだろう。

臼歯は“咀嚼のための歯”である。

一方、前歯は食物のかじり取るための“捕食ための歯”である。

捕食するには、さらに口唇や舌、手足など体全体を使う必要がある。

最近、咀嚼の重要性について言われるが、捕食については少ない。

しかし咀嚼の前には、捕食がある。

捕食の重要性について述べる前に一つの動画を見ていただきたい。

これは顎咬合学会のホームページに公開されている動画である。

タイトルは「噛むことと生きること(小児編)」。
図1 (以下の画像をクリックすると動画再生ページへリンクします)
okazaki_20140718_01

この動画を撮影されたのは、

佐賀県武雄市でマスダ小児矯正歯科医院を開業されている増田純一先生。

先生は、顎咬合学会の指導医であるとともに日本小児歯科学会の専門医でもある。

これは二十数年前に撮影されたものだ。

まず小児の下口唇に、スプーンに置いた食物を持って行く。

最初の例は、口唇を伸ばし食物を取り込む。

口元に緊張が見られない。

しかし、問題はここからである。

4・5歳の小児、なんと口はパクパクするのだが、口唇が伸びないので捕食することができない。

上口唇がまったく動いていないのだ。だから上顎乳前歯の歯肉まで見えている。
図2
okazaki_20140718_02

さらに次の小児。

口唇が動かないので、舌で食物を取りに行こうとする。

やっと取り込めたら、オトガイ筋(注1)の過度の緊張よりウメボシ様のシワまで出る。
図3
okazaki_20140718_04

これら小児は、決して障害を持っているわけではない。

だけど・・・できないのである。

この動画を何度も見返しながら考えていただきたい。

“この口唇で、口笛を吹くことができるだろうか?”

“紙風船を膨らませることができるだろうか?”

“ロウソクの火を消すことができるだろうか?”

将来、これらの小児にどんな問題が起こるのだろうか?

どのようにすれば治るのか?

そのためには、どうしてこのようになったのかを考える。

その原因が治療法につながるのだ。

続く

 

注1)オトガイ筋:オトガイ筋は下唇のすぐ下から顎の先端の近くまで伸びる。口を閉じるとき、下唇を上に引き上げる作用がある。

 

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/