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モンゴルにおける小児う蝕と歯学教育 その【5】

2014年06月14日

筆者が大学に入学した頃、ある小雑誌に出会った。

タイトルは“大学で何を学ぶか?”、某大学の入学式での特別講演をまとめたものだった。

40数年前に読んだ雑誌の冒頭には以下のように書かれていた。

「大学への入学おめでとうございます。
今日は、これから“大学で何を学ぶか?”という話をします。
みなさんは、まだ若い。これから10年しても、まだほとんどは20歳台です。
きっとさまざまな人生を送られていることでしょう。
さてここで、一つ考えて欲しいことがあります。
今から10年後、どのような仕事につき、
どのような生活をしているでしょうか?
それも、できるだけ具体的に思い浮かべてください。

(間)

いかがですか?
これは難しいことでしょう。
大学で最初に学ばなければならないのは、このことなのです。」

なるほど!

当時の筆者には、衝撃的な言葉だった。

大学入学したことは、ゴールではなく、単なる出発点なのである。

常に5年、10年先にしたいことを見据えた上で、
今何をしておけば良いかを考える。

すなわち、自分の目標を持つことが、
大学で最初に学ばなければならないことだと言う。

もちろんそのためには、社会や経済の変化にも目を向けておかねばならない。

筆者の学生時代、乳歯う蝕が多く“う蝕の洪水”と言われた時代であった。

そのような背景から、幼稚園などで子ども達の惨状を目の当たりにしてきた。

そこで感じたこと。

“乳歯う蝕が多くとも処置終了後、定期的に診ていけば、
きっと健全な永久歯の獲得が可能になるに違いない。”

思えば、これが小児歯科を志したきっかけだった。

面白いことに同年代の小児歯科医には、同じ経験をした者がほとんどだ。

やはり学生時代の経験は、将来の生き方に大きく影響する。

モンゴルの歯学教育においても、実際に幼稚園などで子ども達の口腔を
見る機会を与えることが必要だ。

その中から、将来を担う優秀な人材が出てくるに違いない。

そんな理由で今年の春から、歯科学生が地域でさまざまな経験をする実習が
始まった。

続く

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
歯のふしぎ博物館 館長(Web博物館)
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/