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小児歯科診療における治療の組み立て その2

2010年01月18日

小児歯科においては、治療の組み立てを考え泣きのリスクを減らすことも、治療計画の一部です。

そのためには、無痛的処置の可能性が高い感染根管処置から開始することの一つの方法です。

今回から、乳歯の感染根管治療の実際について述べてみましょう。

まず乳歯の感染根管治療は、基本的に3回で終えるようにしています。

初回治療:
1:レントゲン撮影
     レントゲン撮影を行い、病巣と根の状態と後継永久歯を確認します。
     (注1)

2:ラバーダム防湿
     基本的にラバーダムを装着して行います。

3:軟化象牙質の完全除去と髄腔の開拡・天蓋除去
     軟化象牙質除去後、歯髄に最も近接している部分から髄腔を開拡し、天蓋を除去します。

このようにすると穿孔の防止となります。
(注2)

また髄床底を傷つけないよう留意します。

さらにはあらかじめ咬頭を一層削除し、咬合を低くしておきます。
(注3)

4:簡単な髄腔内の汚物除去
     初回は、髄腔内や根管上部の汚物を除去する程度にします。

前回まで述べたように、急性症状の発現が見られることがあるため、初回
は不用意に根尖部をいじらないようにします。

5:FCの貼薬
     髄床底にFCの小綿球を置き、さらにその上に緩衝用としての綿球を置き
ます。
     (注5)

6:セメントで仮封
     (注6)

このように初回は、天蓋除去後FCの小綿球の貼薬と仮封だけなので、短時間で終了する簡単な治療となります。

簡単な治療により小児は安心し、次回の治療に対する心理的な閾値の上昇にもつながります。

開放の状態で治療を終える場合

筆者が感染根管治療でJ貼薬で開放して終えるのは次の2つのケースです。

1:急性症状のある場合:
     頬部に及ぶ腫脹など急性の炎症症状のある時、同時に抗生剤の投薬も行います。

2:非協力児の場合:
     髄腔の開拡は痛みのない簡単な処置です。

痛みのない処置は、次の治療にプラスに働きます。

初回は天蓋除去とJの貼薬開放だけにします。

次の治療で軟化象牙質を除去し、FCの小綿球を置き仮封するか、次回も大泣きする場合は、もう一度Jの貼薬開放で様子をみます。

注1:第2乳臼歯の場合は、下顎の第2小臼歯の先天欠如が多いので、先欠の有無をレントゲンで確認しておく必要があります。(女児に多い)

注2:急性症状のある場合は、バーは新しい良く削れるものを用い、振動による痛みを与えないように配慮します。

注3:髄床底まで軟化象牙質が及んだり穿孔のあるものは予後が悪くなります。
       カルテには、動揺の有無や歯肉膿瘍の有無について記載します。

注4:臨床的に軟化象牙質を完全除去しないでFCを貼薬すると、以後歯肉膿瘍が治りにくいようです。

注5:貼薬の綿栓が大きすぎると、仮封剤の脱離の原因となります。
       乳歯は歯冠長が短く脱落し易いので、ストッピングや水硬性セメントを避けます。

仮封の脱離は、予後を悪くするばかりで泣く治療期間を延ばします。

注6:慢性的な瘻孔などは、初回のこの処置で歯肉膿瘍の大半が消失します。

 

>>岡崎先生のホームペ-ジ
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