2009年09月24日
現在、最新号(9月20日発行)のビックコミック・オリジナルに“玄米先生の弁当箱 第49食目 命の入り口 前篇”が掲載されている。
グルメ志向のマンガが多い中、まじめに食を取り上げており、たいへん好感が持てる。
これが人気の秘密である。
作者の“魚戸おさむ”さんは、家庭裁判所の裁判官を描いた「家栽の人」(全十三巻)のマンガで有名である。
テレビでも数回放映されたのでご覧になられた方も多いだろう。
“家栽の人”の字をよく見ると“栽”の字は、“裁判”の“裁”ではなく、“栽培”の“栽”の字を使っている。
これは単に「少年を裁」くのではなく、植物を「栽培」するように、少年の心を育むという意味であろう。
このおかげで、裁判官を目指そうとする若者まで増えたと言う。
作者にお会いしたことがあるが、主人公の裁判官のモデルのように実直で人間味溢れる方であった。
さて、話は戻って“玄米先生の弁当箱”の“ワンシーン”。
4歳の誕生日のお祝いに、ケーキのロウソクを吹き消そうとする。
ところが吹き消せないのである。
しかも息を吹きかけるシーンでは「フー」ではなく「ハー」と書かれている。
口唇の力が弱く、口をすぼめる事ができないのだ。
きっと常に口が開いて口呼吸をしているのだろう。
口唇閉鎖力が弱い子は、口笛を吹いたり、風船ガムを膨らますことができないのは知っている。
ついに口の機能の低下が、ここまで来たか・・と思った。
しかもその父親は「食育王子」と呼ばれ、グルメ番組では有名人と言う設定である。
皮肉な話だ。
この父親、味覚を追求するあまり、大切なことを忘れているようだ。
おそらく有名コミック誌で“噛まないことの弊害”をこのような形で取り上げられたのは初めてであろう。
そう言えば最近、幼稚園の園長先生から聞いた話。
「言葉の教室」へ通うことを希望している保護者が多いと言う。
子ども達の滑舌があまりにも悪いためだ。
しかも障がいのためではない、まったく健康な子ども達の話である。
これは小児歯科の診療室でも感じることだ。
年齢の割に幼児語で話すケースが多い。
小児科から“言語不明瞭”とのことで紹介されてくる。
口の機能に問題がないか?の問い合わせである。
例えば、5歳になっても“サカナ”と言えず“タカナ”としか言えない。
そのような子ども達を診ていると、舌を丸めたり、ひっくり返すことができない。
さらには大きな口さえ開けることができない。
この原因の一つが食べ物にあると考えている。
大きな口を開けて、食べ物にかぶりつくことがないのである。
このような食べ方をすると口唇に力が入るし、筋肉も鍛えられる。
さらには噛む回数も自然に増える。
しかし・・・・である。
食べやすいように、食物を小さく・・小さく・・小さく・・切って与える。
これが問題だ。
まさに、子どもにとっては「小さな親切、大きなお節介」なのである。
食生活の変化は、顎の骨や歯並びだけでなく、口唇や舌の機能低下を生み出し、確実に言葉にも影響を及ぼしている。
さて次号はこの話の後編、どうなるか楽しみである。
参考:家栽の人
http://ja.wikipedia.org/wiki/
>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/