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ハイハイと乳前歯の外傷

2008年05月19日

転んで乳前歯を打ち陥入や脱臼などの外傷は、ヨチヨチ歩きを始めた1~2歳児に多い。
まだ十分、体のバランス機能が育っていないためだろう。
不思議なことに、同じ子どもが転倒を繰り返し、歯科医院を訪れる。
さて、前歯の外傷が多発する理由として、転んでもとっさに手が出ないことがあげられる。

しかし、年配の養護教諭は「昔の子ども達は転んだら絶対手が出ていた。」と口をそろえて言われる。
「転んで手が出ないのは、ハイハイが少なくなったため」という説もある。

それでは、ハイハイが少ないとどうして手が出ないのだろうか?

こんなことを考えると、小児歯科を志すものとして楽しくなる。
さて最近、生活の欧米化とともは机やイスが増えたため、つかまり立ちを早くするようになったと言われる。
一方、かつての日本家屋は、畳の生活が中心で、つかまるものがなかったからハイハイが多かった。

そこでハイハイとつかまり立ちの関係について調べていたら、面白いことに気がついた。

さて読者の方は、「ハイハイ」と「つかまり立ち」では、どちらが先だと思われるだろうか?
当然のごとく「ハイハイ!」と答えられると思う。
ところが・・・だ。
海外の文献を見ていると、「つかまり立ち」の方が先なのである。

 

(図1)
子供が独り歩きするまでの図

 

まさに生活習慣の差が、子どもの発達に影響していることがわかる。
さて、話は戻る。

ハイハイが多いと、手が出る理由。

ハイハイは、顔を前に向け頭を出しながら、手が床についている姿勢である。
すなわち頭部が、不安定な位置にあるときには、手が前に出ていることがわかる。乳児期にハイハイを行う中で、自然にこのような反射が脳に構築されるのだろう。だから転ぶ際、頭部の位置が不安定となったとき、瞬間的に手が出て顎・顔面が防御される。

でも、ハイハイの時代は、もう卒業したから、いまさら・・と思われるだろう。

大丈夫。

家庭で“おウマさんごっこ”をして遊べばよい。
これで新たな反射を作り出す。
とりあえず、ツバを指につけ眉に当てながら、よく転ぶ子どもの保護者に話していただきたい。

 

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