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アドラー心理学のすすめ その8:移り変わる心理状態

2013年04月30日

アイ・メッセージを使うことで、術者・患者関係が円滑になるばかりでなく、自身のセルフエスティーム(自尊感情)も高まる。

この状態は交流分析の

A:I am OK. You are OK.(私もあなたもすべてOK)

の状態であり、人間同士の共感に満ち理想的な関係である。

交流分析には他に、

B:I am OK. You are not OK. (私はOK。でもあなたはOKでない。)
C:I am not OK. You are OK. (私はOKでないが、あなたはOKである。)
D:I am not OK. You are not OK.(私もあなたもOKでない。)

のパターンがある。それぞれの状態は、

B:支配的で他人不信の人間関係で、攻撃的言動に出やすい。
C:劣等感を持ち、消極的で憂鬱感にさいなまれる。
D:自閉的で非建設的な人生観をとる。

もちろん

A:I am OK. You are OK.は最高の状態だ。

しかし人の心は、この4つの状態を絶えず行き来しているように思えてならない。

学校を卒業し、就職した頃。

最初は、臨床の現場がわからないので、無我夢中で周りの先輩に教えを乞い、同僚に追いつく気持ちでいっぱいであった。
これは、I am not OK. You are OK.の状態だ。

そして仕事が面白くなり、臨床に励む(I am OK. You are OK.)。

しかし、慣れてくると不満の心が芽生えたり、傲慢さが頭をもたげ、他人の意見に耳を貸さなくなる(I am OK. You are not OK.)。

そして自分自身を見失い、つまらないミスを繰り返し、次第に気持ちが荒む(I am not OK. You are not OK.)。

これではいけないと思い心機一転、勉強会に通い、新しい考え方やテクニック等を身に付ける(I am not OK. You are OK.)。

そこで人間的にも臨床的にも一皮向け、新たな飛躍が期待される(I am OK. You are OK.の状態に戻る)。

まさに人の心は、移り変わっているのである。
(図1)

これは戦後の日本経済の変遷でも言えることだ。

日本が戦争に敗れ経済的に困窮し、アメリカに追いつこうとしていた時代。

これは、Japan is not OK. America is OK.の時代である。

そして日本が驚異的な復興をみせた高度経済成長の時代
(Japan is OK. America is OK.)。

さらに株式や資産の過度な高騰をみせたバブルの時代
(Japan is OK. America is not OK.)。

ついにはバブルが崩壊し世界的な経済低迷の時代
(Japan is not OK. America is not OK.)。

残念ながら、日本はまだ長いトンネルを抜け出せないでいる。
人の心も経済も、おごり出すと感性が摩耗し仕事の老化が始まる。
自分の心理状態がどこに位置するか、常に見極めておきたいものだ。

注1:“自分としても誇りに思い、他者からも充分に認められるであろうという自負心・自尊心”。
注2:交流分析は、精神科医エリック・バーン(Eric Berne)によって提唱された一つの心理学理論。精神分析の影響を受けた理論に基づき、人格構造や対人関係でのやりとりの型の分析を行う技法。
注3:OKには次の意味がある。
OKである。:安心感がある。正しい。楽しい。いい人だ。役に立つ。価値がある。
OKでない。:安心できない。弱い。無知である。劣る。失敗する。愛されるに値しない。

 前 岡山大学病院 小児歯科 講師
 モンゴル健康科学大学(旧:モンゴル医科大学) 客員教授
 歯のふしぎ博物館 館長(博物館はWeb博物館です。)
 岡崎 好秀
 ⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/