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なるほど ザ保健指導&健康教育【14】口から始まる食中毒予防 その5

2017年09月19日

ヒトの体は、感染予防に対するさまざまな関所を持つ。

(図1)

例えば、唾液。

唾液には、リゾチームやラクトフェリンそれにIgAなど様々な抗菌物質が含まれる。

皮膚表面の皮脂腺からも類似した物質が分泌される。

また鼻粘膜や気管にある繊毛上皮。

ここから粘液を分泌し、繊毛の動きにより異物を体外へ運び出そうとする。

これも関所の一つと言える。

さらに胃液。

胃は、pH1の塩酸を分泌し細菌やウイルスの強力な殺菌作用を持つ。

胃液を指先に一滴落とせば、たちまち水泡ができ皮が剥ける。

これが逆流し嘔吐を繰り返せば、歯は溶けて酸蝕症になる。

胃液はかくも強い酸なのだ。

さて、コレラ菌も酸に弱い。

コップ一杯のコレラ菌に胃液を一滴落とすると瞬時に死滅する。

ちなみにう蝕原因菌のミュータンス連鎖球菌は、酸を産生するから酸に強いはずだ。

それでもpH4.8程度で活動を停止する。

さらに酸に強い乳酸菌でもpH4.0程度で停止する。

ちなみに乳酸菌飲料に含まれる乳酸菌シロタ株。

これは胃液に負けず、腸まで生きたまま達する菌を分離培養したものである。

そして腸管内で乳酸菌の作り出す酸により悪玉菌に作用し健康に寄与する。

さて、ここで少し考えていただきたい!

もし胃が強い酸を分泌しなかったらどうなるだろう?

昼食で食べたご飯…。

体温によって菌が培養される。

おやつの時間には、胃の中は巨大な”生ごみ倉庫”になっているはずだ。

当然、悪玉菌が大量に増殖している。

(図2)

これを防ぐために胃液が分泌されるようになったのだ。

ヒトの体のふしぎには、驚かされることばかりだ。

しかし…である。

もし胃液によって完全に殺菌されれば、食中毒は起こらないことになる。

しかし、何らかの理由で細菌が胃を通過するからトラブルが起こる。

その理由はなんだろう?

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/