2004年04月05日
アドラー心理学では「人間は未来に向かって目標を設定する。
すなわち頭の中にいだく未来の目標に向かって、われわれは進んでいくのであり、未来の目標が現在を決める」としている。
つまり患者さんが歯を磨かないのは、決して面倒なのではなく、将来が見えないので磨かないと考える。
逆にいえば、将来を暗示することができれば、本人や保護者の齲蝕予防に対する認識が高まり、望ましい歯科保健行動を期待できると思われる。
そのためにも、患者さんにとってわかりやすい保健指導が重要である。
さて、これまでの保健指導は、あまりにも説得型の指導が多かったように思う。
そこで、将来を予測する方法として齲蝕活動性試験は有効である。
私たちは、齲蝕活動性試験の持つ予測性を、動機づけとして利用している。
齲蝕活動性とは、齲蝕が新しくできつつある、または小齲窩がさらに進行し、て大きな齲窩になりつつあること、さらに齲蝕が一歯に限らず、多くの歯牙に多発する傾向を言う。
ここでは、簡便で安価かつ齲蝕増加の予測性に優れているCAT21テスト(図1)について述べることにする。
図2は1歳6カ月時のCAT値と3歳時の齲蝕罹患状態との関係であるが、高リスク群は低リスク群と比べ、約2倍のdf歯数であり、本試験法は齲蝕増加の予測性に優れていることがわかる。
しかし、6歳になると、両群の差は小さくなる(図3)。
1歳6カ月から3歳の間は、食生活などの生活習慣が変化し、齲蝕活動性にも影響を与えていることが推察される。
そこで図4では、1歳6か月時と3歳時のCAT値の組み合わせと、6歳時の関係について調べてみた。
1歳6ヶ月から3歳にかけて低リスク群を持続する者に比べ、低リスクから高リスクになった者はdf歯数が高いことがわかる。
また、1歳6か月時でリスクが高くても、以後のリスクが低下しているものは、齲蝕の増加が少なくなっている。
すなわちCAT値は、ある時点で判断するのみならず、定期健診でも継続的に把握し、その変動に注意する必要があることがわかる。
たとえば予防管理で来院している児で、急にCAT値が高くなった場合には、何か問題があると考え、生活習慣や刷掃習慣に関する問診を行ない指導している。
最後に臨床的に考えられるCAT値の変化と齲蝕の状態について、おおまかに提示しておく。(図5)