2007年10月15日
最近、口唇の閉鎖力が低く、常時口を開けている若者が目につく。このことは、口呼吸や口呼吸性歯肉炎のみならず、異常嚥下癖などによる開咬の原因となる。
そこで、幼稚園児から高校生までの口唇閉鎖力について研究すると同時に、それに影響を与える因子ついても調べてみた。
一連の研究の中で、小学校5・6年生における口唇閉鎖力と視力との関係について調べてみると、口唇閉鎖力は視力と関係するという結果が得られた。口唇閉鎖力の強い1/3の児童の平均視力は1.27に対し、弱い1/3では0.94と、その差は0.3もあった。(図1)
図1
さてこの結果は、偶然なのか、必然なのか?
そんな“何故?”を考えると面白い。
筆者が、10年ほど前に行った研究。グミを5分間前歯で噛み、サーモグラフィーで顔面の皮膚表面温度を測った。筋の活動量や血液循環が良くなれば当然温度は上昇する。その結果、噛んだ後では、咬筋・側頭筋などの閉口筋相当部のみならず、開口筋である舌骨筋群が存在する頸部でも上昇していた。さらには、口唇周囲でも上昇が認められた。なるほど!!!噛むことは、咀嚼筋のみが働いているのではない。食物の取り込みや、食塊の落下防止のために口唇周囲筋も働いていたのだ。だから口の周囲の温度も上昇したのか・・・。(図2)
図2
ところがだ・・・・・・。不思議なことに眼の温度も上昇していた。前歯で噛むと、どうしてこのようなことが起こるのか?当初、これは何かの間違いだと思い、研究はそこで中断した。
しかし、今回の口唇と視力の研究結果を見るにつけ、両者には、なんらかの関係があるに違いないと思い始めた。
そのような眼で、資料を探しているとおもしろい写真がでてきた。これは、サルの授乳のシーン。(図3)
図3
顔のシワが深いので顔面表情筋の走行がよくわかる。授乳時には、口輪筋のみならず、頬筋まで引かれている。さらに頬筋の延長上には、眼輪筋が連なっている。授乳は、口輪筋のみではなく、顔面表情筋すべてが働くものなのだ。だから、口唇閉鎖力が眼の調節機能に影響している可能性は十分考えられる。こんな新説。先生は、どう思われるだろうか?
□■ 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/