2017年02月20日
成人の歯科診療は“心が開かずとも 口は開く”。
しかし子どもの場合“心が開かなければ 口は開かない”。
ここに、小児歯科診療の難しさがある。
子どもが一度泣き始めれば、それを止めるのはたいへんだ。
乳幼児歯科健診においても、保護者は泣きに気をとられ話を聞く余裕がなくなる。
この一言を発すれば、泣き止む“魔法の言葉”なんて存在しない。
だからこそ、先回りして泣かせない配慮が必要となる。
むし歯や歯周病予防だけが予防ではない。
泣きの予防も立派な“予防の一つ”なのである。
さて泣きが始まる前には、一定の法則がある。
その一つである“泣きに至る呼吸”を紹介しょう。
これから述べることを、少し試していただきたい。
まず、子どもになったつもりで、泣きの呼吸をしていただきたい。
…と言われても、急には泣けない。
そこで、最初に短くハ~アと息を吸う。(1回目)
これだけでは泣けない。
さらに、もう一度短く息を吸う。(2回目)
まだ肺に十分な空気は行き渡らない。
そこで、次はハア~~!と大きく息を吸う。
そして、ワア~ン!!!と爆発するはずだ。
3回目の吸気の後、本格的な泣きが始まることがわかる。
これを乳幼児歯科健診の場に置き換えて考えてみる。
子どもがハア~! ハア~!と2回目の吸気をした瞬間に子どもを起こす。
すると、どうなるだろうか?
少し考えていただきたい。
そう!
まるで風船の空気が抜けるように肺がしぼむ。
こうすると、本格的な泣きには至らない。
この間、保護者に口腔内の状況や問題点について話をする。
そして子どもの呼吸が安定したら、また寝かせる。
これを繰り返しながら、フッ化物塗布や保健指導を行うのだ。
こうして泣きを最小限に抑えれば、終わってからも引きずらない。
さらに、握手やハイタッチを行って帰す。
かくして乳幼児歯科健診はスムーズに終了する。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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