2017年01月16日
初めて乳幼児歯科健診に行ったのは、38年前の小児歯科に残って間もない頃。
それ以来、少なくとも月に一回は従事してきた。
当初、低年齢児は泣くのが当たり前だと思っていた。
しかし、年齢が少しでも違うと泣き方も違う。
例えば、健診の順番に並んでいるとする。
1歳6か月児は、前の子どもが泣く様子を見ても泣くことが少ない。
まだまだ、次が自分ということが認識できないのだろう。
ところが2歳では、その様子を見るとつられて泣き出す。
次が自分であることが雰囲気からわかるのだ。
一人が泣くと、次々と泣きの大合唱が始まる。
しかし、3歳になると前の泣きには左右されない。
“自分と他人は別である”ことがわかるのだろう。
また、どんな年齢でも泣きを最小限に抑えれば、終わってからも引きずらない。
しかし一度、本格的に泣かせてしまうと最後まで続く。
術者が指導をしても、保護者は泣きに気をとられ聞く余裕がなくなる。
だから歯科健診の場でも、泣かせないための工夫が必要だ。
子どもが泣くものだと思うと、自分は上手にならない。
しかし何かが足らないからと思うと、上手になる部分はたくさんある。
それが何かを考える。
そんな工夫は、診療室でもきっと活きてくる。
例えば低年齢児の歯科健診は、術者と保護者が向き合って座る対面座位(knee to kneeのポジション)で行う。
同じように、歯科診療室でもすべてチェア上で行う必要はない。
泣き出すと思えば、無理する必要はない。
さてこの姿勢、まず保護者は子どもと向かい合い抱っこして座る。
コツは、まず子どもの両足を広げさせる。
そして、保護者は脇をしめ肘で子どもの足を固定するのだ。
こうすれば、子どもは足をバタバタできない。
歯科治療や健診時は、まず子どもの頭部の固定が必要と考えがちである。
しかし、その前には下半身を固定しておく必要がある。
赤ちゃんの寝返りだって、腰を捻って足を交差させることから始まる。
下半身が動くと、上半身はもっと動くのだ。
足を広げないと、突っ張って保護者のお腹を蹴ってしまう。
さらに保護者は手をつなぎ、おへその上で固定する。
こうすれば子どもは、術者の手の動きを遮ることができない。
そして、そのまま術者の膝に寝かせる。
術者は、左手で軽く子どもの下あごに触れる。
ここに手を添えると起き上がりにくい。
この姿勢にスムーズに持ち込むことがポイントだ。
続く
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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