2016年10月17日
現在、フランス、ハンガリー、アメリカ(カリフォルニア州バークレー市)、メキシコなどでは、“砂糖税”が導入されている。
イギリスでも2018年の実施に向けて検討されているという。
さらには、WHOも砂糖入り飲料の課税を各国に呼び掛けている。
砂糖税の主なターゲットは、砂糖入り清涼飲料水なのである。
世界的に肥満やII型糖尿病が増加した原因の一つと考えられているのだ。
なかでも、果糖の多い高果糖液糖が疑われ、使用を制限する運動が広がっている。
その理由について解説する。
さて高血糖の状態が続くと過剰なブドウ糖は、組織中のたんぱく質や脂肪と結合する。
これが糖化反応であり、終末糖化産物(AGE)が組織に沈着する。(注1)
その結果、動脈硬化、皮膚のシミ、骨粗鬆症、白内障など老化を促す。
この反応を果糖は、ブドウ糖より10倍以上起こしやすいのである。
そこでブドウ糖と果糖は、同じ単糖類であるが代謝経路が少々異なる。
ブドウ糖は、小腸での吸収後、血液中に入り脳や筋肉など全身でのエネルギー源となる。
一方、果糖は小腸粘膜で一部ブドウ糖に変換されるが、門脈を通り速やかに肝臓に達する。
肝臓は、糖化反応による毒性を消すため、果糖を優先的に処理するのだ。
そしてブドウ糖に変換されエネルギー源となる。
しかし、過剰な果糖は中性脂肪となり、脂肪組織に蓄積され肥満につながる。
また、ブドウ糖を摂取すると血糖値が上昇する。
このことで満腹感を得ることができる。
しかし果糖は、直接血糖値を上げない。
そのため満腹感が得られず、食べ過ぎる可能性があるのだ。
さて我々が摂取する果糖は、大きく二つに分けることができる。
一つ目は果物からの摂取である。
果物には、果糖の他に多糖類や食物繊維などが含まれる。
またビタミンやミネラルなども豊富である。
そのためリンゴを食べても、果糖はゆっくりと吸収される。
だから自然の果物を適度に食べるのは問題ない。
しかし異性化糖はどうだろう?
清涼飲料水に含まれる果糖を多量に一気に摂取してしまう。
これが肥満につながり、生活習慣病のリスクが一気に高まる。
歯科医師は、むし歯予防だけでなく肥満予防の面からも、清涼飲料水について注意を促す立場にあるのだ。
(注1)
AGE:終末糖化産物(Advanced Glycation End Products)は、タンパクと糖が加熱され生成される物質で、強い毒性を持ち老化を促す原因物質である。
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
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