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謎解き唾液学 【14】CAT21テストとCAT21bufテストの組み合わせ

2016年04月04日

う蝕は、

[1]唾液緩衝能・唾液流出量などの歯を防御する因子
[2]う蝕原性菌数・酸産生能等などの歯を攻撃する因子

のバランスによって発生や進行が規定される。
(“アタック・ディフェンスパワーバランス説”)

(図1)
s_スライド1

前者を調べる試験法は、唾液緩衝能テスト(CAT21Buf テスト)がある。

歯を城に例えるならば、城壁の高さを調べる方法といえる。

(図2)
s_スライド2

一方、後者の酸産成能やう蝕原性菌数を調べる方法としCariostat法(CAT21 テスト)やDentocult-SM Strip Mutansがある。

これは歯(城)に対する攻撃力を調べている。

(図3)
s_スライド3

ここで酸産生能を調べる代表的な方法のCAT21 テストを紹介する。

アンプルには蔗糖とpH指示薬等が入っており、綿棒で採取した歯垢を投入し48時間37℃で培養する。

(図4)
s_スライド4

アンプル中では、歯垢に含まれるう蝕原生菌が砂糖を利用して酸を出す。

その程度により青(0)から緑(+1)、黄緑(+2)、そして黄色(+3)へと色変化する。

幼稚園児を対象にCAT21 テストとう蝕歯数との関係を調べた。

その結果、低リスク群のdf歯数2.07歯に対し、高リスク群は6.68歯であった。
高リスク群ではdf歯数が多く、その差は4.5歯であった。

(図5)
s_スライド5

さて、歯の攻撃因子と防御因子のテストを組み合わせれば、より口腔内の的確な把握が可能となるはずである。

そこで同じ幼稚園児に両テストを組み合わせ、う蝕歯数との関係について調べた。

その結果、両者とも低リスク群ではdf歯数が1.21歯に対し、高リスク群は7.0歯と、両者の差は拡大した。

(図6)
s_スライド6

さらに5歳児を対象として、判定結果と1年後のdf歯数の増加についても調べた。

1年後のdf歯数の増加は、両者とも低リスク群では1.66歯に対し、高リスク群は4.11歯となっていた。

両テスト法を組み合わせることで、う蝕増加の予測法としても利用できることがわかった。

(図7)
s_スライド7

おもしろいことに両試験法の判定結果には、全く関係がみられなかった。

これは歯の“攻撃因子”と“防御因子”を別々の“ものさし”で測っているからに他ならない。

これらう蝕活動性試験を用いることで、診療室においてより口腔内状態が的確に把握できるだろう。

CAT21Buf テストとCAT21 テスト詳しい資料は以下をクリック

http://okazaki8020.sakura.ne.jp/cgi-bin/dentalmagazine.pdf

 岡崎好秀、下野勉、松村誠士:
 診療室におけるう蝕活動性試験の有効利用
 その1.唾液緩衝能テスト(CAT21Buf)について、その2.唾液緩衝能テスト(CAT21Test)について、
 モリタDental Magazine、 106:42-51、107:11-26、2002.より

 参考1
  岡崎好秀、東知宏、村上知、岡本安広、山岡瑞佳、Bazar Oyuntsetseg、松村誠士、下野勉:
  新しい唾液緩衝能テストに関する研究 第2報CAT21テストとCAT21Bufテストの組み合わせ効果、
  小児歯誌、40(1):140-147、2002.

 参考2
  Bazar Oyuntsetseg 、Y.Okazaki、 M.Hori、Omar. M. M.Rodis、S.Matsumura、T.Shimono:
  Caries activity test in Mongolian and Japanese children、
  Pediatric Dental Journal14(1):61-67、2004.       

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/