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謎解き唾液学 【13】CAT21bufテストの開発(2)

2016年03月22日

唾液流出量は、20歳頃にピークを迎える。

唾液流出量が多いと、唾液緩衝能も高くなる。
そのため唾液緩衝能は、年齢により分布が変化する。

すなわち唾液腺が未発達の小児期や、分泌量のピークを過ぎた高齢者では、唾液緩衝能が低下するのだ。

さて、CAT21Bufテストは、幼稚園児において約半数が低リスクになるように調整している。

そのため唾液流出量が増加する中学生では、低リスクの者が70%になる。

(図1)
s_スライド1

中学生の唾液緩衝能とう蝕歯数との関係について調べてみた。

その結果、低リスク群(高緩衝能)のDF歯数は4.34歯に対し、高リスク群(低緩衝能)では6.72歯となり、約2.3歯う蝕歯数が多かった。

本テストは、中学生でもう蝕歯数と強い関係があることがわかる。

(図2)
s_スライド2

さらに中学生1年生の判定結果と、その後の第2大臼歯のう蝕増加について調べてみた。

ここでも高リスク群は、低リスク群よりう蝕の増加が多かった。

本テストは、う蝕増加の予測性があることがわかる。

(図3)
s_スライド3

それでは、成人ではどうだろう?

成人の刺激唾液では、90%が低リスク群となった。

しかし90%が低リスク群となれば、試験法としては問題である。

リスク分布が偏ることは、好ましくない。

そこで、次に安静時唾液を用いて判定した。

すると、低リスク群が約40%に減少した。

(図4)
s_スライド4

安静時唾液は、刺激唾液より唾液緩衝能が低いためである。

以前も述べたが、唾液緩衝能を左右する主たる因子の重炭酸塩は、唾液腺で生成された後、導管通過時に再吸収される。

安静時唾液は、分泌速度が遅いため再吸収されやすい。

一方、刺激唾液は再吸収する前に口腔内に分泌されるのだ。

CAT21Bufテストを成人に用いる際は、安静時唾液を用いれば有効なことがわかる。

しかし、その採取には時間がかかる。

そこで考えたのが、刺激唾液を減らして判定する方法だ。

すなわち、原法では1.0mLで判定するが0.5mLで判定すれば良い。

こうすれば、成人でも低リスクが増加する。

(図5)
s_スライド5

では唾液緩衝能を高めるためには、どうすれば良いだろう?

それは唾液流出量を増やすことである。

そこで3か月間、毎日3回ガムを噛み安静時唾液・刺激唾液量を調べてみた。

すると、両者とも分泌量が増加するとともに低リスク群が増加した。

(図6)
s_スライド6

ガム咀嚼により唾液腺が活性化され唾液緩衝能が高まるのである。

 
CAT21Bufテスト(発売 モリタ)
http://do.dental-plaza.com/search/item/detail/id/36690000/

 

※参考1
 岡崎 好秀、東 知宏、田中 浩二、岡本 安広、村上 知、宮城 淳、井上 哲圭、福島 康祐、松村 誠士、下野 勉:
 中学生における唾液緩衝能テストとう蝕罹患状態の関係について、小児歯誌、38(3)、615-621、2000.

※参考2
 岡崎 好秀、岡本 安広、村上 知、東 知宏、山岡 瑞佳、田中 浩二、紀 瑩、松村 誠士、Rodis、 Omar、Bazar Oyuntsetseg、下野 勉:
 中学生における唾液緩衝能テストのう蝕の増加予測について、小児歯誌、(40)2:348、2002.

※参考3
 岡本 安広、岡崎 好秀、山岡 瑞佳、東 知宏、田中 浩二、日野 早苗、森裕 佳子、松村 誠士、下野 勉:
 唾液緩衝能テスト(CAT21Buf)の判定結果の改善方法に関する研究 ガムによる咀嚼訓練効果について、口腔衛生会誌、(52)4:328-329、2002.

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/