2010年05月06日
前回、形成時に手を上げさせることを繰り返し、信頼関係の確立とタービンの音に対する閾値(*注)を高める方法について述べた。
しかし麻酔をしたとはいえ、充分に効いていないかもしれない。
不用意に削って痛ければ、これまでの苦労が水の泡となる。
一端、小児が泣きだすと止めるのはたいへんだ。
こちらまで泣きたくなってしまう。
そこで、次に考えるべきこと。
それは削っても痛くない部位から始めることである。
さてそれは、どこだろう?
まず、セメントや充填物。
次に考えられるのは、フリーエナメルである。
この部位を削って嫌がったら痛みではなく、まだタービンの音に対する閾値が高いことがわかる。
フリーエナメルなどでは平気であったが、象牙質を削り始め嫌がると麻酔が充分でないことがわかる。
もう一度麻酔の追加を行うか、充分効くまで時間をおく必要がある。
ところで、第1乳臼歯と第2乳臼歯に隣接面カリエスがあったとする。
麻酔をうち、ラバーダムを装着し、手を上げる練習もした。
これから隣接面カリエスの形成を始めるとする。
さて第1乳臼歯と第2乳臼歯。
あなたは、どちらの歯から始めるだろう?
(*注)
閾値(しきいち):その値を境にして、動作や意味などが変わる値のこと。
不用意に削り始めるより、麻酔の効きやすい歯を先にすれば有利である。
これは第2小臼歯と第1大臼歯の形成を想定すれば良い。
第2小臼歯は、単根だから効きやすいはずである。
また歯槽骨も薄いから、麻酔液も根尖に到達しやすいだろう。
一方、第1大臼歯は、緻密骨であると同時に3根である。
効く確率が低下するのは当然である。
同じことが乳臼歯でも言える。
もし第2乳臼歯から始め痛みを与えると、本来麻酔が効いている第1乳臼歯でも泣かれる可能性が高くなる。
一方、第1乳臼歯を先に形成している間に、第2乳臼歯も効奏する可能性もある。
痛くない治療をするためには、形成の順序まで考慮する必要があることがわかるのだ。
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