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“泣きの予防”その6「物理的時間と心の時間」

2008年12月15日

「もう少しですから・・・もう少しで終わりですから・・!」の言葉。
あなたは1日に何回、無意識に言っているでしょうか? でも患者さんにしたら、“どこまでがもう少し・・”なのかわかりません。
もっと具体的な目標を掲げると、患者さんは楽になるように思うのです。

さて、10分を越える処置を行うと泣き始める子どもがいたとします。
ところが処置には、どうしても15分必要です。
後の5分は泣かれる計算になります。

 

(図1)
限界時間

 

このようなケースにおいて、どのように対処すればよいでしょうか?

ところで、時間には2種類あります。
一つは、物理的時間、もう一つは心の時間です。
前者は、時計の針が指す時間。
後者は、心の時間です。
心の時間は“伸び縮み”するという特徴があります。
例えば、楽しい時間はすぐに過ぎます、しかしつまらない時間は、なかなか過ぎません。
学生時代の講義を考えればわかります。
気持ちの持ち方によって時間は、伸び縮みすることがわかります。
要は、心の時間を利用して診療することができないかと思うのです。
それは、“数を数える”ということです。

 

(図2)
限界時間

 

ここで、例をあげて説明します。
これから麻酔をするとします。
まず「これから虫さんを眠らせるけれど、ちょっと変な感じがするかもしれません。でも5数える間だけ、お声さん出さずに頑張って、その後ブクブクしてね」と言います。

そして、“イチ・ニイ・サン・シイ・ゴオ”と数えるとします。

 

(図3)

この1文字が1秒としたら10文字となり、10秒間で麻酔をしなければなりません。

でも10秒では、十分な麻酔ができません。
ここで数え方を変えれば、15秒になります。

さてどのような言い方をすれば良いでしょうか?

“ヒトツ・フタツ・ミッツ…”と数えたら時間は1.5倍かせげます。

 

(図4)

次に、20秒になる方法はどうでしょうか?

簡単ですね。

“ヒトツ~・フタツ~・ミッツ~…”と伸ばして数えれば2倍に化けました。

 

(図5)

さらに25秒にする方法。

これは“ヒトツ~メ・フタツ~メ・ミッツ~…メ”と“メ”をつけるのです。

 

(図6)

 

今度は、25秒から一気に50秒にする方法があります。

さてみなさん、考えてみてください。

正解は、ドクターが言ったことを、アシストがそのまま、繰り返すのです。
私が“ヒトツ~メ”と言えば、アシストは間をおいて“ヒトツ~メ”と繰り返します。私が“フタツ~メ”と言えば、アシストも“フタツ~メ”となります。

 

(図7)

 

でも、明確な目標を掲げているので、子どもは頑張ってくれます。

ちなみに、印象採得は10数えると言います。
固まるのが遅いと、時間をかせぐために「イツツまで来たから後半分だ!」
とか「ココノツまできたから、後ヒトツでおしまいだよ。」等という言葉を入れます。

もちろん、アシスタントも繰り返します。
こうすると、ますます時間は伸びます。また私が数えるペースにより、子どもの呼吸が同調するので、嘔吐反射の予防にもなります。
こんな話で、時間を引き延ばしていたら、紙面が長くなってしまいました。
長文失礼!

 

>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/