2008年02月18日
“ヤツメウナギ”と言っても、ウナギの仲間ではない。目のうしろに7つのエラ穴があり、目が合計8つあるように見えるので、こう名づけられた。円口類に属し“アゴのない魚”として有名である。歯でサケやマスの表皮を破り、血液や体液を吸いとって生きている。
アゴがないことは、下等な動物を意味している。事実、これより上の脊椎動物は、すべてアゴを持っている。アゴのある・なしで、さまざまな差がもたらされる。例えば、免疫能。そこでアゴと免疫の進化について述べる。
まずヒトの体は表皮や粘液により、細菌やウイルスから守られている。これは、物理的な防御作用であり第1のバリアーと言える。これを突破されても、細菌に対してはリゾチームやマクロファージ、そしてウイルスにはNK細胞が控えている。これが第2のバリアー“自然免疫”である。次には、抗原提示細胞やT細胞、それにB細胞により抗体を作り、それぞれの細菌やウイルスを特異的に見分け反応し撃退する。さらには、その抗原を記憶し、新たな進入に対してすばやく・強く反応する。これこそ第3のバリアー“獲得免疫”である。
自然免疫は、生まれたときより体に備わり、広く浅く反応するのが特徴である。
一方、獲得免疫は、生後に得ることで狭く深く効果的に反応する。
さて、ヤツメウナギは“自然免疫”しか持たない。すなわち、抗体を作ることができないのだ。しかし、それより上の脊椎動物は、抗体を作ることができる。
この差こそ、進化におけるアゴの獲得と関係が深い。アゴがなければ、限られたものしか食べられない。しかしアゴを得れば、歯で獲物に咬みつき、引きちぎり食べることができる。そうすると、さまざまな種類の食物を摂取する。栄養効率は、良くなるだろうが、さまざまな抗原も進入するだろう。そこで、免疫系が高度化するのである。ヒトは、アゴを獲得し食性が多様化することで免疫系を進化させてきたことがわかる。
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