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動物園の動物達も高齢化【1】ハズバンダリートレーニング

2018年10月12日

現在、日本は高齢化が進んでいるが人間社会ばかりでない。

動物園の動物達も高齢化が進んでいる。
高齢になると、抵抗力が低下しさまざまな病気を発症する。

そこで動物園では、ライオンやトラなど肉食の大型動物などに対し、全身麻酔を施し健康診断を行うらしい。
触診や聴診、エコーによる画像診断、さらには採血やワクチンなども接種する。
もちろん飼育担当者の安全も考慮するためでもある。
しかし、高齢化すると全身麻酔の負担が大きくなる。

そこで動物園の世界では”ハズバンダリートレーニング”なる言葉がある。
これは「受診動作訓練」と訳され、動物の健康管理のための訓練だ。
(図1)

体の異常を早期に把握するために、定期的な体重や体温測定が基本となる。
そのためは、体重計に乗ったり、横向きになり直腸温を測る訓練が必要だ。
また病気の診断のため、採血もできるようにしておきたい。
さらには緊急時、スムーズな治療を行うため、動物を慣らしておく必要もある。
そのためには、飼育員と動物の信頼関係が重要である。
そこで動物にエサやご褒美を与えることで、自主的に移動したり、手足を出したり、口を開けるように教えておくのである。

さて福岡県の大牟田市動物園は、この先進的な取り組みで全国の注目を集めている。
大牟田市動物園 http://www.omutazoo.org/日本で初めて全身麻酔なしで、ライオンやトラ、そしてツキノワグマなどの採血に成功した。
ここでは、一般客も訓練を見学することができる。
そのため今や、人気急上昇の動物園となっている。
東の”旭山動物園”、西の”大牟田市動物園”といっても過言ではないだろう。

そこで、訓練の様子を見るため動物園を訪問した。
(図2)

さて、これはツキノワグマの採血の訓練である。
まずクマが檻の前に近づく。
すかさず、飼育員がご褒美にピンセットで小さなリンゴを与える。
檻の横にはクマの手が出る穴がある。
クマは、そこから手を出して木をつかむ。
毛の一部が剃られており、ここ採血することがわかる。
続けてもう一人の飼育員が、その部分に触れる。
こうしてスモールステップ毎にご褒美を与え、あらかじめ採血に慣らしておくのだ。
(図3)

続けて、飼育員がクマの目の前で人差指と親指を広げた。
その後、驚くべきことが起こった。
なんと! クマが大きな口を開けたのである。
(図4)

続く

前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/