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アレキサンダー・フレミングとリゾチーム

2007年08月06日

アレキサンダー・フレミングは、ペニシリンを発見したことで1945年にノーベル医学・生理学賞を受賞した。
 
 
(図1)
図1
 
 
1928年、彼はインフルエンザの研究中、ブドウ球菌の培養皿に青カビが混入し、周囲の細菌の生育が抑制されていた。これがペニシリンの発見のきっかけとなったのは有名だ。

その6年前の話。フレミングは、もう一つある発見をしていた。ある日、彼は風邪を引いており鼻水を一滴落とした。すると鼻水の周りに細菌の阻止帯ができていたのだ。これがある大発見につながった。

さて彼は、何を発見したのだろう?それは“リゾチーム”である。“溶菌させる酵素”の意であり、唾液や涙に多く含まれる。リゾチームは、溶菌や組織修復を促進させ、口腔内における生体防御作用の最前線の位置をしめている。実際、乳白色になるほど多くの細菌で濁った懸濁液に唾液を落とすと、またたく間に溶菌され透明な液になる。
 
 
(図2)
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野生動物が、傷口をなめるのもこの作用によるものだ。唾液にはこの他、ラクトフェリンやIgAなど抗菌物質が含まれる。面白い事にこれらは、すべて安静時唾液に含まれる。安静時唾液は、皮膚の皮脂腺と同様に体を守る働きがあるのだ。例えば、サカナのヌルヌル物質を除去すると、寄生虫が侵入したり、カビが生える。そういえばリゾチームは、卵白に多く含まれる。どうしてだろうか?

実は、卵の殻には無数の穴が開いている。この穴を通じて呼吸をしているのだ。
だから卵を洗えば呼吸ができず死んでしまう。そう!卵の無数の穴からは、細菌が侵入しようとする。これを防ぐために、リゾチームは卵白に多く含まれるのだ。昔から“風邪引きには卵酒が良い”と言われるが、これもリゾチームの効用かもしれない。もっとも、卵白より作られるリゾチームは、卵アレルギーの人には禁忌である。いずれにせよ、なにげない唾液だが、このような不思議が隠されていることを知りながら診療をすると面白い。
 
 
□■ 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/