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喫煙とリスク分析

2006年02月06日

現在、喫煙による末梢血管の収縮作用により、歯周病に罹患しやすいばかりではなく、予後にも大きく影響することが知られている。
このことは歯の寿命が短くなり、8020の達成を妨げる一つの要因となると考えられる。それゆえ、歯科医師は禁煙運動に積極的に参加すべき立場となっている。そこで、患者さんが興味を持ちそうな喫煙のリスクについて調べてみた。

最近、アスベストが中皮腫や肺がんなどの発症に影響するとされている。
なかでも教育現場では、アスベスト使用の建物には立ち入り禁止となっている。
さて、アスベストの住居に住み続け、肺がんで亡くなるリスクは、人口10万人あたりの生涯リスクは、10名と推定されている。(1999松崎)
それでは、受動喫煙で早死にするリスクはどの程度だろう?
驚くなかれ、10万人中5,000名とされている。
受動喫煙のリスクは、なんと!アスベストの500倍となっている。
アスベスト問題より、敷地内禁煙のほうが早急に実施されなければならないことがわかる。(図1)
 
 
図1

 
 
数年前、非喫煙者には生命保険料が割引される商品が発売されマスコミを賑わした。しかし、最近ではあまり耳にしない。
どうしてだろう?
売れないからなくなったのか・・・。
それとも他の理由があるのだろうか?
そこで生命保険業界における喫煙のリスク分析について調べてみた。

英国のDoll教授は、喫煙と寿命との関係を50年にわたり追跡してきた。
その結果、喫煙者の半分以上はタバコが原因と見られる病気で死亡していることがわかった。
また喫煙者(25本/1日)は、70歳で半数が死亡するが、非喫煙者は70歳でも80%の生存率である。(図2)
 
 
図2

 
 
さて今、喫煙の有無と関係のない生命保険があったとする。
喫煙者は早死にするので、非喫煙者の掛け金から保険料が払われてる割合が高くなる。これは“喫煙者にやさしい生命保険”である。
少ない保険料で、大きな補償が得られる。
まさに喫煙者にとっては、お得である。
是非、お勧めしたい。
しかし・・・・非喫煙者は、喫煙者のためにお金を払っているようなものであり、“非喫煙者には不利な生命保険”と言える。

そこで、生命保険には「健康体割引」やノンスモーカー割引などの商品が発売されたのだ。
例えば、5000万円の定期保険は30歳加入で年20,650円違い、40歳加入では年49,550円の差となり、10年間ではそれぞれ約20万円、約49万円もの違いとなる。(図3)
 
 
図3

 
 
ちなみに、非喫煙者割引は外資系の保険会社に多い。
大手生命保険会社と比べ、概ね30%程度の割引となっている。

さて毎日のように新聞には生命保険の広告が掲載されている。
しかし、不思議なことに、非喫煙者割引についてはまったく書かれていない。
禁煙が当たり前になりつつある現在。
非喫煙割引の宣伝が過ぎると、希望者が続出し保険会社が破綻する恐れがあるのだろう。
まさに生命保険は、“よく考えて” 加入する必要がありそうだ。
 
 
参考:喫煙のリスクと生命保険料(http://www.hoken-erabi.net/seihoshohin/goods/9512.htm