2005年08月17日
乳幼児の吸啜や咀嚼は、言葉の機能的に発達に大きく影響する。
今回は、さらに詳しくこの点について述べてみよう。
さて、唐突な質問であるが、日本の赤ちゃんが出生後1年位で発する、最初の“意味のある言葉”とは何だろう?それは、“マンマ”である。
それでは、中国の赤ちゃんが発する最初の意味のある言葉とは何だろう?
これも、“マンマ”である。
それでは、アフリカの赤ちゃんが発する最初の意味のある言葉は?
やはり、“マンマ”である。
それでは“ヨーロッパ”では?“南アメリカ”では?“オーストラリア”では?
そう! 答えは、すべて、“マンマ”である。
世界中の赤ちゃんが、最初に発する意味のある言葉は“マンマ”なのだ。
“マンマ”は世界中の赤ちゃんの共通語といえる。
それでは、どうして“マンマ”なのだろう?
この解答こそ、ヒトが哺乳類であることに関係する。
さて、“マンマ“の意味は、“ゴハン”であり、“母親”であり、“乳房”である。
これらの共通点は、赤ちゃんにとって、これらがなければ生きていくことができない存在である。
哺乳類にとって、最初の栄養源は母乳である。
この母乳を獲るためには、口唇で乳首を捕らえ吸啜することだ。
そのためには、口唇を動かせ閉鎖することが必要である。
さて、“マ行”、“バ行”、“パ行”“ファ行”は口唇を使い発する音であり“口唇音”と呼ばれている。
ためしに口唇を閉じないで“マ・ミ・ム・メ・モ”と言ってみよう。
マ行の発音には、口唇が不可欠であることがわかる。
これは何もヒトに限ったことではない。
哺乳類すべてが同様である。
ウシは「モオー」と鳴く。
ヤギは「メエー」と鳴く。
それにブタは「ブーブー」であり、ネコは「ミャーオ-」である。
ゾウは「パオー」と鳴き、これらすべて口唇音である。
“イヌは「ワンワン」と鳴く”と言われるかもしれない。
しかし、英語では、「bow(バウ)」であり、ドイツ語でも「bau」ではないか。
ちなみに爬虫類までの動物は、口唇を利用して鳴くことができない。
カエルはゲロゲロと鳴くと言われるかもしれない。
しかしカエルは、口を閉じて頬を膨らませている。これは頬の筋肉の袋(鳴嚢)によるものなのでシステムが違う。
いずれにしても、赤ちゃんにとって最初の意味のある言葉が、哺乳類の特徴である唇音の「マ」で始まり、それが生きていくために必要不可欠であることは興味深い。
※参考:岡崎好秀:謎解き口腔機能学、クインテッセンス出版、2003.
図1:“マンマ”は世界の赤ちゃんの共通語。
図2:哺乳類は、口唇音で鳴いている。