2011年05月02日
阪神淡路大震災での出来事を紹介する。
ある避難所での出来事である。
ごみ箱には、弁当のハンバーグがたくさん捨てられていた。
聞けば、お年寄りの方が捨てられるそうである。
どうしてハンバーグを捨てるのだろう?
“食べ慣れていなかった”のか?
単に“味が濃かった”のか?
それとも“歯が悪く噛めなかった”のか?
でも、ハンバーグなら少々歯が悪くても噛めるだろう。
なぜなら、現代の軟食文化の代名詞のように言われる食物であるからだ。
しかし・・・である。
ハンバーグを噛むことができなかったのだ。
脂は、寒いと硬くなる性質を持つ。
なるほど!
他にもおにぎりが凍り、焼きおにぎりにして食べたという話も多い。
寒い場所では、日頃の常識が覆されるのだ。
現在、同じことが起こっているのではないかと思うと心が痛む。
もう一つ、ある被災者から聞いた話を紹介する。
直後の避難所でのことである。
初めて届けられた救援物資は、乾パンだった。
以下、その方の言葉。
私が乾パンを食べていたら、前にお年寄りが座っていました。
その方は、パンを口にしようとはしませんでした。
そこで「まだ、これからどんな事態(余震・大火災)が起こるかわからないから、無理してでも食べておいた方がいいですよ」と言いました。
しかし、返ってきたのは「歯が悪いので食べられない」という言葉でした・・。
後で考えると、そういった方から先にダメになっていきました。
「野生動物は歯を失うと、獲物が取れず命に関わる」と言われる。
でも人間だけは、別だ・・・と思っていた。
しかし非常事態では、人間も野生動物の一つに過ぎないのだ。
歯は、人間にとっても生きていくための武器なのである。
被災された方々の口の復興をお祈りしたい。
>>岡崎先生のホームペ-ジ
http://leo.or.jp/Dr.okazaki/