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乳歯の根管治療の勘どころ その1:乳歯の根管治療にマニュアルはない

2009年11月16日

多くの歯科医から乳歯の根管治療について質問を受ける。

「乳歯の根管治療には手を焼かされている・・・。」

例えば、「根管治療を繰り返しても、歯肉膿瘍が引かない・・・。」

「根管を少し触っただけなのに出血する」。

「瘻孔があるため歯髄死かと思い、髄腔を開けたら生活歯だった・・。」

「乳歯の根管を拡大したら急性症状が発現し、信頼関係を失った。」

しかも、理由について調べても成書には書かれていない。

そればかりか、乳歯根管処置の術式に関しては、ほとんど記述がない。

まず極めて記述が少ないのは、年齢とともに歯根が吸収するためである。

また歯髄に炎症があれば病的吸収が始まっている。

このため術式をマニュアル化できないのだ。

そこで根管治療は、乳歯のその特異性を熟知した上で行う必要がある。

以下、筆者の経験から乳歯の根管治療について感じてきたことについて述べる。

さて乳歯の歯周組織炎のデンタルX線フイルムを見ると、多くのケースに根分岐部に病巣が認められる。

 

(図1)

 

永久歯では,根分岐部に及ぶ病巣は少ない。

しかし、乳歯ではどうして多いのだろう?

これは、歯髄腔から根分岐部への側枝が多いことが予想される。

交換のため吸収される運命にある乳歯なら当然だ。

少しでも理由を考えればわかることである。

論文を検索すると、下顎第1乳臼歯において、側枝の割合は60%との記述があった。

しかし臨床的には、もっと多いだろう。

こう考えれば乳臼歯の髄床底は、“目に見えない第4の根管”と言える。

根管だとすればきれいに清掃することが必要である。

歯髄や血液残渣を取り去り死腔を作らない。

あるいは側枝を薬剤(サフォライド希釈液など)封鎖することで、予後をよくする可能性が高まるかもしれない。

続く・・・。

 

新聞情報:
*:11月22日より 西日本新聞(福岡)で“食卓の向こう側”
―第13部 命の入り口・心の出口― として第1・3面に“歯や咀嚼にまつわる”連載(10回)がスタートします。

*:11月24日より、朝日新聞朝刊(火曜日)科学欄で、筆者がコラムを数回担当します。

掲載地域:北陸(石川・福井)・近畿・中四国(除:山口)

 

>>岡崎先生のホームペ-ジ
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