MAIL MAGAZINE メールマガジン

口呼吸がなぜ増えるのか? その2 口輪筋の由来

2008年03月17日

前回、口をポカ~ンとあけて口呼吸をしている子ども達が増えた理由の一つとして、軟食化の影響により、口腔機能が十分に発達していない可能性があると述べた。口呼吸は、口唇の閉鎖力、すなわち口輪筋が弱いと考えられる。それでは、口輪筋は、どこからきたのであろう?その由来について考える。

さて魚類や爬虫類は、口の裂け目に厚い皮が張り付いているだけで口輪筋を持たない。哺乳類になり、始めて母乳を吸うため口輪筋などの顔面表情筋を獲得した。

 

(図1)
顔面表情筋

 

しかし、下等な哺乳類においては、上唇から鼻にかけて移行的になっている。
上唇は二つに分かれて中央がくっつかずに濡れた鼻の一部が入り込んでいる。
しかも上唇は歯肉に移行し、遊びがないので動かせない。これは、ウサギを想像すればわかることだ。このような口唇では、まだ陰圧形成は完全にできない。
だから乳首を舌で舐めたり、しゃぶったりなどの飲み方になる。まだ口輪筋が口の周囲を取り囲んでいないのだ。

これが高等なサルになると、口の周囲を取り囲む。類人猿では、口唇が発達し、尖らせることにより完全な吸啜も可能となる。顔の人中は、進化の名残であることがわかる。ちなみに、ヒトの口唇の赤い部分“赤唇縁”は、粘膜が薄いため、血液が透けて見えている。これは皮膚と粘膜の移行部がめくれ上がたもので、ヒトの特徴である。

ところで顔面表情筋は、それぞれ独立したものでなく、複雑に筋線維が入り組んでいることが知られている。ここで頬筋の走行について考えてみる。まず左右頬筋の最上部と最下部は、口唇の上下を走っている。また、頬筋の中央で口角より上の線維は、口角から下方に入り下唇に移行する。さらに下の線維は、上唇に移行する。その他、口角挙筋は下唇に線維を送り、口角下制筋は上唇に繊維を送っている。これらの筋肉は、口を小さくし閉じるように走行してする。
そう!巾着袋の紐と同じなのだ。

 

(図2)
口輪筋

 

口輪筋は、頬筋に由来していることがわかる。それでは、頬筋はどこからきたのだろう?

さて、哺乳類の肉食動物は口が裂けている。獲物を捕えるためにはその方が有利である。しかし草食動物は、食物のエネルギーの効率が低い。そこで食物をこぼさないように頬ができた。

 

(図3・4)
哺乳類の肉食動物の口 哺乳類の肉食動物の口

 

さらに臼歯で噛んだとき、食物は舌側に落とした方が便利だ。そのためには頬筋を収縮させることが必要だ。

 

(図5)
臼歯で噛んだとき

 

この過程で頬筋ができたと推察できる。

さらに硬い食べ物は、この筋肉を強く収縮させる。これが口輪筋の発達にもつながる。だから軟らかい食物は、頬筋や口輪筋など口腔周囲筋の発達を妨げる。
これが口ポカーン族の原因ではないか。硬い食物をよく噛むことは、顔面表情筋の発達と密接に関係する。

 

>>岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/