
2006年06月05日
ミュータンス菌、40分間に1回分裂したならば・・・・。
間もなく、むし歯予防週間である。
 この季節、小学校から歯科講話を依頼されている先生も多いことだろう。
 そこで、今回はむし歯の原因について述べることにする。
さて、これから一般的なむし歯の原因論を紹介するが、ここには大きな間違いがある。
 どこが間違っているだろうか?
 頭をひねっていただきたい。
「むし歯は、口の中のミュータンス菌が、砂糖を食べて酸を出す。
 この酸によって、歯が溶かされむし歯ができる。(図1)
  
  
 図1
 
  
  
 さてお分かりだろうか?
 この質問を歯学部の学生にしても正解は10%に満たない。
 どこが間違いなのだろう?
実は、この文章には“歯垢”の言葉が出てこない。
 これが正しいとすると、子ども達にとって歯ブラシで除去するものは、
 1. ミュータンス菌
 2. 砂糖
 3. 酸
 のいずれかになる。
しかし歯ブラシで除去するのは歯垢ではないか。
 歯垢が原因でむし歯や歯周病が発病する・・・なのに“歯垢”の言葉が見られない。
 これは大きな誤りである。
 小学生に話をする時には、まず歯垢が悪者であることを伝える必要があるのだ。
 そして歯垢を作らないための方法として砂糖の話、歯垢を除去するために歯磨きの話を行っている。
 このように整理したほうが、子ども達にはわかりやすい。
ところでミュータンス菌に、最高の条件を与えれば40分間に1回分裂し2個となる。
 40分が一世代なのだ。
 そして80分後に、再度分裂し4個となる。
さて歯垢1g・・・すなわち1円玉の重さには約10の11乗の細菌が存在する。
 この菌数は、ヒトの糞便1gの約3倍の細菌数である。
 さて読者の方、臼歯部の舌側を舌でなめていただきたい。
 もし、ヌルヌル・ザラザラしていたら,糞便の3倍の菌をなめたことに相当するのだ。
 このように話すと、子ども達に受ける。
ちょっと、ここで単純計算してみた。
 1個のミュータンス菌が40分に一度分裂すると仮定すると、1g(10の11乗)になるのに約24時間40分。
 この調子で増加すると、1kgになるのに31時間。
 そして、1tになるのに38時間。
 さらにジャンボジェット機は180tだから、約43時間。
 何と!世界最大級のタンカー(バティラス号 フランス)は、全長400mで54万2,400tであるから、50時間後に達成することになる。
 これだけの細菌となると、顎がはずれるどころではない。
 でもどうして実際には起こらないのか?
 これは単なる数字のマジックだ。
 この理由。
 それはミュータンス菌のエサである砂糖がそれだけ存在しないためである。
 たった1個のミュータンス菌からでも、話はどんどん広げられるのだ。
図1:この絵には、誤りがある。どこだろうか?
    「むし歯は、口の中のミュータンス菌(むし歯菌)が、砂糖(甘いもの・糖分)を食べて酸を出し、この酸によって、
   歯が溶かされむし歯になる。」