2004年04月19日
乳歯と永久歯の齲蝕の間には、強い相関関係が認められる。
教室の調査でも、3歳時で齲蝕のない小児は、12歳時の平均DF歯数(永久歯)が3.4歯に対し、9歯以上群では、平均DF歯数は7.02歯となり、約2倍のスピードで永久歯齲蝕が増加している。(図1)
乳歯の齲蝕処置を繰り返すだけでは、なんら永久歯の健康を獲得できないことがわかる。
一般に、患者にとって歯科治療は、充填することが治療であると考えている。
しかし歯科医療従事者は、齲蝕発生の原因が変わらない限りは、二次齲蝕や新生齲蝕が発生することを知っている。
このギャップをどう考えたらよいのだろうか?
さて図2は、齲蝕処置の終了した幼稚園年長時のCAT21の結果と、以後3年間の永久歯齲蝕の増加との関係である。
リスクの高いものほど、永久歯齲蝕が多いことがわかる。
このような、客観的な指標で将来の口腔状態を暗示することが可能であれば、患者本人や保護者の齲蝕予防に対する認識が高まり、望ましい歯科保健行動を期待できると思われる。
また、患者にとって理解しやすい保健指導が重要であることは言うまでもない。
例えば、乳歯と永久歯の齲蝕の関係は、次のような話をしている。
「雑草が生い茂っている状態の花壇に、新しい苗を植えても育つわけがありません」それは以下の理由です。
(1)太陽の光は雑草に遮られて、苗にまで届かない。
(2)肥料は、雑草のための肥料になってしまう。
(3)雑草の病害虫が、新しい苗にうつってしまう。
まさに、むし歯だらけの乳歯が雑草。そして新しい苗が幼若永久歯です。
このように、保健指導は“なるほど!”と思われるように話。つまり説得型の指導ではなく、納得型の保健指導が基本であると思う。
図3の最も下の線は、3歳時で齲蝕処置を希望して初診で訪れ、CAT21テストを利用し動機付けをおこないつつ、処置終了後も定期健診を受けてきた12歳のDF歯数である。
初診時に乳歯齲蝕が9歯以上であれば、治療を繰り返すのみでは12歳の平均DF歯数7歯のはずだが、定期健診を受けることにより約1.4歯に止まっている。
定期健診の予防効果がいかに大きいかが理解される。
現在、わが国では人口10万人に対し約51件の歯科医院があり、この割合は今後も増加の一途をたどるだろう。
筆者は歯科医院の適正数について詳しく知らないが、従来型の治療中心の診療形態ならば、患者数は減少していくことは間違いないだろう。
しかし定期健診により予防管理を充実した歯科医療を行なえば、この問題は杞憂に終わるのではないだろうか。