2004年02月16日
前回述べたように、唾液流出量と緩衝能は正比例するので、刺激唾液流出量を増加させることが緩衝能を高めるうえでも重要であることがわかる。
さて、刺激唾液などの奨液性唾液には、唾液アミラーゼや緩衝能を高める重炭酸イオンが多く含まれる。
一方、安静時に分泌される粘液性唾液には、リゾチームやlg-AAなど生体の防御作用として働く物質が多く含まれる。
ところで刺激唾液量は、顎や舌運動と密接に関係する。
例えば、舌を前上方に出し、元の位置に戻すと顎下腺から唾液が分泌される。
これは、舌の動きにより口腔底の容積が増し、同時に顎下線が陰圧となり唾液が生成される。
次に、舌を元に戻ると容積が減少し唾液が分泌される。
耳下腺唾液も閉口時には、頬部の筋肉は弛緩し腺組織の容積は大きいが、開口時は筋による圧力で唾液が分泌される。
このように刺激唾液は、咀嚼運動によるポンプ作用として分泌されていることがわかる。
ちなみに、刺激唾液量は、食品の種類や硬さによって異なり、90gのハンバーグでは2cc、20gのスルメでは11.5ccの刺激唾液が、流出される。
次に、唾液緩衝能判定結果(CAT21バフテスト 図1)を良くする食べ方について説明する。
(1)水分の含有量が少ない。よく噛まないと飲み込めない。 水分の少ない食物は唾液分泌を促進する。
例えば、フランスパン、丸干しいわしは、唾液量が十分でないと嚥下できない。
水分の量が多ければ噛まずに飲み込み 易い。また食事中は、お茶や水を飲まない。水で流し込み食べをすることを水洗式咀嚼と言う。
(2)細かく切られていない大きな塊を与える。
食物形態が大きく、包丁のかわりに前歯を使い噛みきらなければならないもの。前歯で噛み切る食物は咀嚼回数が自然に増加する。
(3)皮のついている食品:
皮付きリンゴは、皮なしリンゴの約2倍の咀嚼回数になる。 パンのミミなしとミミ付きも同様である。
(4)加工されていない食品:
食材を、長時間煮込むほど、水分を吸収し軟らかくなるので、加熱時間を短くする。
(5)おふくろの味:
煮物などの昔からのわが国の食事。あらかじめ袋に入っているものは、”お袋”の味ではない。
(6)歯ごたえがある食べ物は、舌がよく動く。舌の動きについては、前述した通りである。
(7)ガム(チューイングペレット 図2)咀嚼
図3・4は チューイングペレットを1日3回、毎食後10分、2ヶ月間咀嚼した場合であるが、
3分間の刺激唾液・安静時唾液ともに1.0ml以上増加している。
なお、安静時唾液は、刺激唾液量の分泌増加にともなって、2次的に唾液腺の発達により増加したと考えている。