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税務会計ミニ情報 相続税編 –遺留分について– ~その4~

2006年04月03日

相続をややこしいものにしている権利に「遺留分」というものがあります。
前回では、思い通りの相続のためには遺言書が大切であることをお話しましたが、遺言書があっても相続人に認められている最低限の保障として「遺留分」というものが残されています。「お前には一切残さない」とか「遺留分は認めない」と遺言書に記したとしても、その遺留分を奪うことはできません。
「遺留分」とは、遺産の2分の1(相続人が直系尊属(配偶者も子供もいない場合のご両親など)の場合は3分の1)と定められており、兄弟姉妹以外の共同相続人に認められています。この遺産の2分の1もしくは3分の1に相続分割合をかけたものが権利を主張できる「遺留分」となります。

 

■ 遺留分の時効 ■
1.相続開始及び遺留分を侵害している遺贈・贈与があることを知ったときから1年を過ぎたら請求できません
2.相続の開始を知らなくても、相続開始から10年を過ぎたら請求できません

 

■ 遺留分が無効となる場合 ■
・相続欠格に該当した場合
 相続欠格とは、相続上の自分の利益のために、被相続人や相続人を殺害したとかで実刑を受けたり、
 遺言書を偽造したとか勝手に廃棄したなどの理由により、相続できなくなることをいいます。

・推定相続人の廃除をされた場合
 被相続人を虐待したり、辱めるなどの理由により家庭裁判所による調停または審判により推定相続人から廃除されます。
 被相続人の生存中は本人が、亡くなった後は遺言執行人が申立てをおこないます。

・自ら相続放棄した場合
 相続欠格や相続人の廃除の場合でも、子や孫がいれば代襲相続することができます。
 また、相続欠格の場合は受遺者の資格もありませんが、廃除の場合は受遺者の資格は失いません。

 

■ 遺留分の計算をするための財産の範囲 ■
相続財産に加えて下記のものも計算に含めます。
1.相続開始前1年以内になされた贈与
2.遺留分権利者に損害を与えることを知りつつ行われた贈与

 

現金であれば計算も楽なのですが、相続財産にはいろいろなものが含まれています。さらに、相続させる「もの」を指定した相続の場合には、遺留分を現金換算して渡す資金繰りなどに困り、結局は「もの」を売却して現金化しなくてはならないこともあります。また、遺留分の減殺請求でもめたがために、裁判が長引いて相続の申告期限に間に合わず、各種の特典である「控除」が使えなくなって多額の相続税を払わなくてはならないこともあります。

相続に際しては「もめないこと」が第一ですが、やはり、直前の遺言書の作成や贈与ではなく、まだまだ先と思わずに普段から相続について考え、こまめな対策を打っておくことが最大限のメリットの享受やご自身の意思を生かす方法となるのです。