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税務会計ミニ情報 相続税編 ~その5~ —相続の開始から相続税の申告までの期限とポイント(後編)—

2006年02月06日

前回松下幸之助氏の遺産総額のお話をしましたが、今年からは、毎年5月に発表のあった長者番付がみられなくなります。この長者番付は、所得税だけでなく、相続税・贈与税、法人税もランキングされていました。
この長者番付、分野ごとに分かれていて、そのランキングの意外性や、業種ごとの格差などいろいろ楽しめたのですが、悪用する人も多かったようです。
もともとのこの公示制度の目的は、たくさんの納税に対する“表彰”と“密告”への期待でした。所得税では税額が1,000万円超の方、相続税では課税価格2億円超・遺産総額5億円超の方、贈与税では課税価格4,000万円超の方、法人税では所得金額4,000万円超の法人が対象となっていました。

高額納税者の公示の基準は、“所得税”を1000万円以上収めていることです。
収入と勘違いしそうですが、税金の額です。
所得税を1000万円納めるためには、給与収入で4100万円必要です。
「住民税が400万円、社会保険が100万円ですから手取りは約2600万円・・・」
と、こういういらぬ計算をしてしまう人間もいるわけです。

ちなみに、1億円納税した方は、給与収入で2億9600万円です。
所得税1億円-住民税3600万円-社会保険料100万円。手許には1億5900万円です。

ここでも、累進課税が気になるところです。税金が多いとみるか、払って当然とみるか・・・。

さて、今回は前回からの続きで、相続で大切な期限とポイントについてです。

5.準確定申告書の提出
今まさに確定申告の時期ですが、人が死亡した場合にも、確定申告と同じものが必要になってきます。その年の1月1日から死亡の日までの所得に対して所得税が課せられるためです。このための申告を「準確定申告」といい、死亡した日から4ヶ月以内に申告と納税を行わなければなりません。

6.相続税の申告書の提出
残された財産の額から亡くなられた方の債務の額とお葬式にかかった費用を控除(引いた)した金額が、基礎控除額(法定相続人の数×1000万円 + 5000万円)を超える時には申告書の提出が必要です。この期限は、相続を知った日から10ヶ月以内です。
財産の合計を計算する場合にも、例えば、「小規模宅地の特例」といって評価額を下げて計算できるというものがありますが、条件に合う場合に申告して初めて受けられるメリットなので、注意が必要です。この特例を使った計算で相続税がかからないと安心していたら、税務署から通知がきて、「申告期限をすぎているので、特例はすべて使えないし、無申告の加算税までとられて・・」という笑えない話も実際あるのです。
他にも、特例がいろいろあって、公益のために寄附する場合など、4ヶ月以内にその特例のための申告をすると、寄附した分はもともとの相続財産の中に含めなくてよいとか、期限がとても重要になってくる場合があります。「ぴん!」とこられないかもしれませんが、財産から負債をひいた金額に対して相続税がきまるので、もともとの財産に含めなくてよくなると、相続税がかからない場合や、累進課税の税率がさがるなどのメリットがあるのです。
一般的に10ヶ月あるから・・と油断していると、せっかくのチャンスを逃したり、思わぬ税金がかかってきたりします。前回も申しましたが、相続税は知っていると知らないでは、大きく違ってきますから、専門家の知恵が大切になってきます。