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税務会計ミニ情報 相続税編 –遺言について– ~その3~

2006年03月20日

前回は法定相続人には順位があることをお話しました。そのため、例えば、お子様がいらっしゃらない場合に、ご主人が「これだけあれば不自由することなく生活がおくれるだろう」と考えておられても、遺言がなければ、ご主人のご両親や兄弟姉妹が相続人に含まれてくるため、財産は奥様おひとりのものではなくなってきます。
10年ほど前の映画に「遺産相続」という作品がありましたが、入籍していない、いわゆる内縁の妻の場合は、相続権すらありません。 事実上夫婦として長い年月を共に暮らしてきても、遺言がなければ、戸籍上の妻でないばかりに、夫婦の財産のすべてを夫の肉親たちで分配されてしまうのです。映画では、人のよい、遊ぶのが好きな夫と、その実質経営を支えてきたのが内縁の妻であるという設定で、内縁の妻のくやしさと法的権利が描かれていました。
今回は、このような“想定外”を生じさせない、希望通りの相続のための遺言についてです。

■ 遺言は法定相続に優先する ■
遺言書がなければ、民法に定められたとおり法定相続が行われます。 しかし、法定相続以外の割合で遺産を分配させたいと思えば、生前贈与を考えるか遺言をするのが最もよい方法となります。 計画的な生前贈与ができる場合はよいのですが、不慮の事故などのことを考えると、縁起が悪いといわず遺言書をしたためておくことが大切です。

■ 遺言の年齢制限 ■
遺言ができるのは満15歳以上です。15歳以下で遺言について考えなくてはならない方というのは、限られているとは思いますが、これはれっきとした民法の規定です。

■ とくに遺言が有効な場合 ■
・事業承継を第一にするとき
・とくに世話になった人があるとき
・子供がいない場合
・相続人がいない場合
・再婚されている場合
・事実婚の場合など
せっかく築いた財産が分割され事業が続けられないという例や、家族であっても、法律による相続分がご自身の○○に残したいという気持ちとあわないケースや、奥様に残したはずの財産が“甥や姪”をまじえての“争続”となる例や、法定相続人がいないためにせっかくの財産が国庫に帰属してしまい、ご自身の遺志が反映されない場合など遺言ひとつで解決することがたくさんあります。

■ 遺言の種類 ■
==自筆証書遺言==
遺言を遺す人本人が自分で書いて仕上げる遺言です。 公証人、証人、費用などを必要としないため一番手軽にできるものですが、無効になることがあるので、形式や必要条件、相続関係などをよく理解しておくことが必要です。

==公正証書遺言==
公証人が仕上げるものなので、無効になることはなく、保管も安心・安全ですが、相続に関係のない証人が2人以上必要ですので、内容が他人に知られてしまう、手数料がかかるなどの欠点もあります。

==秘密証書遺言==
自筆で署名・押印した遺言書を封筒に入れて封印し、証人2人以上と公証人役場で、公証人の確認を受け、証人達とともに署名押印します。 本人が保管しますが、遺言を遺したことが法的に明らかになります。ただし、遺言執行(実際に遺言が行われるとき)に開封するまで、遺言の内容が有効か無効かは分からないという欠点があります。
ほかにも、特別方式といって急な危篤などの場合に一般緊急時遺言(弁護士などの証人の前で口述ですます方法)が認められることもあります。

■ 遺言のおすすめ ■
相続税がどうなるのか疑問なのですが、最近は、亡き後のペットへの生活の配慮への遺言もあると聞きます。相続のお仕事をさせていただくと、遺言書の必要性をつくづく考えさせられることが多くあります。本当に遺言が必要な状況で書きのこすのではなく、毎年お正月や誕生日などの記念日の行事として作成するなど、気軽にできる習慣にしておくのがよいのではないでしょうか。