2014年09月09日
≪クリーンさの着地点を明確にしよう≫
クリーンな歯科医院づくりへのヒントを連載してきて、改めて考えると、多くの医院さんは「なぜクリーンでなければならないのか?」という本質に向き合う姿勢と理解が必要に思えます。
その意識の希薄さが、私のように外部からいろいろチェックしていて「こんな医療現場でよいのか?」と、チェックしている本人が落ち込んでしまうのです。
日本歯科衛生士会調べでも、消毒滅菌に限らず、医院をクリーンにする必要性はわかっているけれど、医院がゴールとするところと、医療従事者との意識のギャップがあることが感じられると発表されています。
同時に、根本的に何が正しいのか、医院もスタッフも理解していないので、クリーンを構築するための方法や手段、行動そのものがわからない現場も多いようです。
このように、医院のクリーンさの着地点があいまいで、それを整備するスタッフも知識がなければ、何から手をつけてよいのかわからず、解決できないでいるのが現実です。
≪クリーンな医院の仕組みづくり≫
そこで、最終回は原点に戻り、知識の積み上げ後、「どうやって業務を稼動させていくのか?」「クリーンとはいったい何か?」といった基本に戻ってみることにします。
そのためには「仕組みづくり」が大事です。
クリーンな歯科医院を目指すというゴールは明確なのですから、その目標にむけての仕組みづくりを、次の3つのステップで構築していきましょう。
第1ステップ:流れを理解する
業務を行う上で、誰もが同じ順序で仕事を行います。
手順を理解するとイメージしてもらってもいいです。
たとえば、患者さんの退出時を考えてみましょう。
(1)使用器具をまとめる
(2)汚染物はひとまとめにする(廃棄)
(3)不潔域を消毒・清掃する
(4)使用器具を消毒室へ運ぶ
(5)手洗いする
(6)新しい器具を準備する
このように、片づけの手順を明確にし、スタッフ全員が同じ方法で仕事を行います。
つまり、(1)~(6)の手順を理解し、実践することです。
第2ステップ:配置を考える
どこに何があるのか? どこへ収納するのか? 片付ける場所はどこか? 器具はどこへ配置されているのか? 患者さんの導入時に、キャビネットの位置や先生のスツールの位置はどこに配置されているのか? などなど、各医院それぞれの配置ルールを決めておくことも大事です。
第3ステップ:タイミングを守る
手順と物の配置が決まったら、最後は仕事のタイミングを決めていきます。
人の動くタイミングやスタッフ間の仕事の受け渡しのタイミングをはじめ、患者さんの導入・退出は常時ですが、滅菌作業など数時間に一度行うような仕事であれば、そのタイミングをルール化していくことも必要です。
院内清掃のタイミングも、午前11時に開始するなど作業タイミングを示しておけば、仕事時間中にムダなく、人員不足から後回しにすることなく、清掃の精度を上げることができます。
このように、業務1つひとつの手順の理解や、物の配置、仕事のタイミングなど明示し、ルールを守ることが、クリーンな歯科医院づくりにつながるのです。
≪歯科医院がクリーンでなければならない意義≫
最後に、もう一度考えてみてください。
歯科医院がクリーンでなければならない意義とは一体なんでしょうか。
歯科医院は医療現場です。人の命にかかわる現場です。
朝清掃が不十分であったり、診療室が備品や診療器具、診療外の書類や私物が散乱していたり、管理が行き届かない物が散乱し、埃まみれになっている診療室が医療現場といえるでしょうか?
基本的な環境が整備されていないのに、世界基準の滅菌システムです、世界レベルの治療ですなどといえるでしょうか。
私の指導経験上、医療現場という場が軽く見られているように思えてしょうがありません。
まずは1人でも多くの患者さんが、素直に「キレイ」と感じる整備を行うことが大切な一歩ではないでしょうか。
これを機会に、ぜひ医療現場としてのクリーンとは何かの原点を見つめ直してみていただければ幸いです。
株式会社ヒンメル
代表取締役社長
歯科衛生士
田上 めぐみ
⇒ http://www.himmel.co.jp