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クリーンな歯科医院にするための6つのポイント【2】洗浄を徹底することは、消毒・滅菌のレベルも向上させる

2014年07月18日

先日、読売新聞に歯科医院で使用する器具(ハンドピース類)の滅菌が、患者さんごとにされている割合は3割強であるというショッキングな記事が出ました。

その後、院長先生の不安は、自医院では正しい滅菌がなされているのか、その方法をどのようにすればよいのか、患者さんから聞かれないかと、内心ドキドキしたのではないでしょうか?
また、業者の方々は、滅菌機器の問合せやスタッフからの質問など、対処するのに大騒ぎになっていたと聞きます。

ちなみに、患者さんごとに滅菌されたタービン使用などの数字は、ここ数年横ばいといわれています。
この現実は、患者さんだけではなく、そこで働くスタッフにとっても大きな問題です。
もしも新卒の歯科衛生士が、クリティカルな器具が滅菌されずに使われている実態を目の当たりにしたら、ようやく手にしたライセンスに魅力が失せ、危険がいっぱい潜む環境からから逃げ出してしまわないかと心配です。

前回ご紹介しましたが、弊社クライアントは全部滅菌を目指す医院ばかりで、スポルディングの分類に沿って、滅菌・消毒という正しいカテゴリー分けで業務されています。
まだ滅菌・消毒のシステムを取り入れていない歯科医院が存在するということは、私たちの啓蒙活動が十分ではなく、意識改革すべき余地が多々あると反省しきりです。

≪消毒・滅菌について院長先生へ改善の提案を≫

ところで、スタッフの皆さんは、今回の記事を見ていかがでしたか。

患者さんの安全が確保されていますか?

タービンのヘッドやコントラなどは、確実に口腔内に入る切削器具です。
唾液・血液が付着するクリティカルな道具を再使用する場合、滅菌工程を経た器具で治療を行うことを学んできたと思います。

先に治療した患者さんの口腔内に入ったタービンが、洗浄なく消毒だけとか適当な消毒や低レベル薬品の消毒だけで、次の患者さんの口腔内に入る――想像しただけでも気持悪いと思います。
交差感染のリスクが高い状況で、治療が行われていることにストレスを感じているのではと心配します。

使用した器具の洗浄や滅菌を常に管理するのは、ほとんどスタッフの仕事です。
医療現場で正しい消毒・滅菌が行われていないのであれば、院長先生へ改善の提案をすることが患者さんの安全につながると考えましょう。
そのためには、自分たちの知識を増やすこと、医療人が正しい知識を持たずに医療行為を行うことは、大変危険なことです。

≪まずは使ったものは水で洗い流すこと≫

クリーンな環境で仕事を行うために、ひとつだけすぐに実践してほしい作業があります。
それは、消毒する器具であっても、滅菌が必要な器具であっても、まずはすべてを「水で洗い流す」ことです。
「洗浄」「予備洗浄」という行為がとても大事です。
使ったものは洗うのです。

私は、年間200日出張に出ています。
もちろん外食が多いのですが、食器・調理台がキレイに洗えてそうなお店で食事することにしています。
できれば、オープンキッチン、あるいはカウンター越しに調理している周囲が見えるお店に入ります。
手洗いもそうですが、調理器具を使えば流水下でキレイに洗う、調理中取り分けた器なども丁寧に水洗する、お客さんが使った器もピカピカに洗っているか?などが気になるからです。
エコ感覚よりもキレイに洗っているかわからないお箸を使うのがイヤで、マイ箸持参で各地を飛び回っています。

こうした食事場所よりも、もっとクリーンでなければならないのが、医療現場である歯科医院という職場です。

≪すぐに始められるクリーン工程≫

世界に誇れる安全性が高い日本の水道水で結構です。
まずは付着した汚れや唾液・血液を洗い流します。
シンクの底近くで、ブラッシングするように洗浄します。
タービンヘッドを使うたびに洗う工程を、業務の中に入れることなら、今日からでもできることです。

もっと良い方法として、使用した器具を洗浄前に蛋白分解剤か酵素系の分解剤を使うことをおススメします。
これは、院長先生へ新しい薬剤をお願いすることが必要となり、提案するまで時間を要するならば、まずは「流水下で洗う」ことを徹底してください。
洗い流すという基本作業が加えられることで、消毒する場合でもよりクリーンな器具に近づきます。

洗浄工程後、器具は滅菌するのが良いですが、消毒しかできない場合は精度を上げるしかありません。
水洗したら水分を拭き取り、希釈濃度の変化や、アルコールが水滴により薄まらない状況をつくること――このように消毒工程の改善をすれば、少しでも患者さんの安全に近づける作業となります。

「水洗」「予備洗浄」は大切なことです、洗浄を行うことは消毒のレベルも、滅菌のレベルも向上させることだと覚えてください。

株式会社ヒンメル
代表取締役社長
歯科衛生士
田上 めぐみ
⇒ http://www.himmel.co.jp