2018年10月11日
前号では、「マイケルジョーダン選手は、緊迫した場面でアゴの下の筋肉が緩んでいる。
上下の歯が接していない。最高にリラックスしているということです。
ここにジョーダン選手の非凡さがあります」というお話でした。
今回もその続きです。
だれしも、長距離を走った時、「ハァハァ」と”舌”を出した経験があるかもしれません。
この”舌”出しは、ジョーダン選手の”舌”出しと同じではありません。
長距離を走ったあとの”舌”出しの理由は、2つあります。
●酸素吸入
有酸素運動をして酸素不足になったために口呼吸で酸素を補っている状態
●体温調節
長距離走によって上がりすぎた頭部の体温を調整するために、舌を出す
ジョーダン選手は、舌は出していますが、唇は閉じています。
唇を閉じたままで口呼吸はできませんので、口呼吸はしていないのです。
完全鼻呼吸で、舌が出ている状態(安静空隙がしっかりと確保された状態)、実はこの状態が、一番酸素濃度が高くなるのです。
鼻呼吸は口呼吸よりも多くの酸素を血中に送り込みます。
鼻から呼吸することで大気は鼻毛、副鼻腔、扁桃リンパ組織を通過します。
副鼻腔を通過することで一酸化窒素が作られ、血管が拡張され効率良く酸素が吸収されます。
つまり、鼻呼吸で舌を出すから、筋肉が柔軟性をもつということなのです。
有酸素運動を続け、酸素不足を補うために口呼吸をするようになると、”舌”が下に落ち込み気道を圧迫します。
するとさらに口呼吸頻度が高くなり、浅く回数の多い呼吸になります。
この状態は酸素濃度が低く、筋肉にとっては不利な呼吸です。
一方、ジョーダン選手の”舌”出しは、鼻呼吸の元で行われ、舌の根の部分が気道を圧迫するのを防いでいます。
舌を出すことで、気道が大きく開き、筋肉の収縮、弛緩に必要な酸素をどんどん吸収します。
結果として柔軟性の高い筋肉を創ります。
アスリートとして理想的な呼吸法となります。
ちなみに、かつて陸上競技で活躍したカールルイス選手は、歯列矯正をして空隙歯列を治したことで記録が出なくなったと言われる先生もいらっしゃいます。
もしかしたらの仮説ですが、矯正して歯列が狭くなり、舌の可動域が狭くなったため、記録が出なくなった原因ではないかという考え方もできます。
そこで、アスリートにお勧めしたいオーラルコアコンディショニングとして、ジョーダン選手のような天性の才能がない方にもおすすめのスポーツパフォーマンスを上げる方法を紹介します。
●上下の歯が接しないように意識する
よく噛むことの効用はよく言われますが、噛む必要のないときに噛むリスクはあまり知られていません。
食事をとるとき以外、上下の歯が接触していることは異常であり、筋肉を硬直させ、舌の可動域を狭くしてしまうことにつながり、口呼吸も誘発します。
●頬っぺたの内側をストレッチしてお口のボリュームを大きくする
頬っぺたの内側を口の中から自分の指や専用の器具でストレッチすることで、硬直していた咀嚼筋が弛緩します。
頬の内側が広くなると、舌の可動域が増えると同時に、鼻呼吸が容易になります。
頬を手で上にあげてみてください。鼻の通りがよくなることを自覚するはずです。
●アゴの下の筋肉を口の中からゆるめる(ストレッチする)
“舌”の下はストレッチすると広がります。
その部分が広がると”舌”の可動域が広がります。
●”舌”の筋トレをする
口の中のコアは”舌”です。
軟らか食が多くなったことから、現代人は”舌”の筋力が衰えています。
“舌”の筋トレをすることで、重力に負けない舌筋となります。
竹屋町森歯科クリニック 院長
森 昭