2010年11月01日
臨床では、思いもよらないハプニングに遭遇することは少なくありません。
そんな時、スタッフの人間力が試される瞬間でもあります。
このような状況においても、すべてのスタッフが迅速かつ的確な判断の上で行動していく力が養われていたなら、それはクリニックのイメージとして映り、患者さんから深い信頼を得ることでしょう。
しかし、世の中、そんなに理想どおりにはいきません。
期待どおりに動いてくれないスタッフ、何度も同じことを繰り返しいっても行動してくれないスタッフ、いわれたこと以外はまったくしようとしないスタッフ、空気が読めないスタッフ、自ら積極的に仕事に取り組もうとしないスタッフetc……。
今回は、こうした“困ったスタッフ”に対しての指導術について触れてみることにします。
<スタッフの行動に存在する理由について理解を深めましょう>
そもそも人の行動には必ず理由が存在します。
では“困ったスタッフ”のそうした行動には、どのような理由が存在するのでしょうか?
・こちらが求めていることを理解できていないために、スタッフは行動することができないでいるのでしょうか?(パターン1)
・こちらの要望はしっかりと理解できているにもかかわらず、行動しようとしないのでしょうか?(パターン2)
・仕事としてしなくてはいけないことは理解できているものの、マイナスイメージ(たとえば、失敗を恐れる心理・行動することにメリットがないなどといった考え)が働いてしまうため、行動できないのでしょうか?(パターン3)
もしも、パターン1のように、単にスタッフの理解不足が原因であるのであれば、スタッフが理解できるまで、丁寧に教えてあげることで解決することができます。
しかし、パターン2・3のように、頭の中では理解されているにもかかわらず、行動できていない、あるいは積極的に動かないとしたら、まずは、その理由を深く探ることが重要です。
具体的には、スタッフに「○○の仕事について、あなたは何パーセントくらいできていると思いますか?」と、スタッフ自ら自己評価をしてもらいます。
それがたとえば「60%くらいできています」との返答があったなら、残りの40%、できなかった部分は何が理由だったのか?どのような問題が存在し、そこにはどのような気持ちが生じているのか?など、その理由について明確に尋ねることが大切です。
<スタッフの心の状態に応じた指導を>
スタッフの返答が、単に「メリットがない」「意味がない」「面倒だから」「やりたくないから」というものであれば、仕事への姿勢・意識・義務について、再認識してもらう必要があります。
この点は、医療に携わる人として、時には厳しく伝えることも大切です。
しかし、スタッフからの返答理由が“失敗してしまうことへの不安”が存在していたり、“自信の喪失”が理由であったなら、スタッフへのサポートを強化しましょう。
スタッフに達成させたい目標を、まずはスモールステップにて段階的に設定します。
スモールステップに設定された目標を、一歩一歩、小さな体験を通して学んでもらいます。
そして、そこには必ず「大丈夫、うまくいかなかった時には、私がサポートするから、あなたは自信をもってすすんでごらん!」といった支援体制を整えます。
スタッフ自ら体験的に学んだことは、確実に身につき、仕事のキャリアとして蓄積されます。
そうした体験学習は自信となり、やがては確信となって人間力を高めていくことでしょう。
チーム医療が求められる中、ベテランスタッフが後輩に伝えるべきこと、指導するべきこと、教えるべきことを、今一度、院長先生と共有しましょう。
そして、それらを日々、繰り返し実践していくことで、組織力は強化され、院長先生のコンセプト、クリニック全員の想いは、確実に患者さんに伝わっていくことでしょう。