2010年10月04日
歯科医院のおかれた環境は、目下、非常に厳しい状況にあります。
医院間競争、患者減、そしてスタッフ不足と、院長先生を悩ませる問題が山積しています。
今回は、対スタッフへの対応を含めた、歯科医院の組織づくりについて言及していくことにします。
院長先生によっては「うちは組織なんていえる規模ではないから……」と思っているかもしれませんが、院長1人、常勤スタッフ1人、パートスタッフ1人の計3名の医院でも、立派な組織であり、組織的活動が求められているのです。
院長先生の医院に対する考え方・理念、診療方針などを、スタッフ全員が理解し、同じ方向を向いて仕事をしていかなければ、患者さんに信頼される医院づくりはできません。
ましてや頻繁にスタッフの離職が相次ぐ歯科医院では、組織的な活動など無理な話です。
この点になりますと、スタッフより院長先生自身の意識改革がポイントになるかもしれません。
では、組織の質をワンランクアップさせるにはどうしたらよいのでしょうか?
突然ですが、輪の中を走る可愛らしい小さなねずみを見たことはありますか?
そのねずみ、なんと1日8Km走っても、まったく異常を起こしません。
今度は、人間が輪を動かしてみます。
つまり、人によって輪が動かされるので、ねずみは否応なしに、その中を走らされる状況をつくります。
すると、2Kmの時点で高血圧を起こしてしまいます。
これはストレスからくる症状です。
この実験から、自ら(の意思で)行動する場合と、やらされる状況の場合では、発揮する力が異なり、前者は後者の4倍も多くの力を発揮することが理解できます。
実は、私たちもこのようなことを日常的に体験しています。
面白い書籍に出会うと、ついつい時間を忘れて読み続けてしまうものです。
気がつくと、夜中の3時、翌日仕事があるにもかかわらず、まったく眠くならないどころか、さらに読み続けても平気です。
しかし、勉強会でのレポート提出!明日までに書き上げなくてはならないと頭では理解できていても、苦手意識から一向にはかどりませんね。
そうです!こうした意識が、人の行動に影響し、さらには能力までも変えていくといっても過言ではありません。
院内組織の質の向上を考えるにあたって、スタッフの1人ひとりの意識が、院内組織向上につながり、院内の雰囲気に大きく影響を与えていきます。
組織づくりをしていくにあたって、スタッフの意識改革は重要なキーとなるのです。
では、具体的にスタッフの仕事に対する意識、仕事への取り組み方を変えていくことについて考えていきます。
まずは、院内スタッフマッピングしてみましょう。
歯科医院には、新人スタッフもいれば、ベテランスタッフもいます。
スタッフの数だけ、その人にとっての“強み”があります。
手始めに、それぞれのスタッフの段階・状況に応じて、各スタッフの強みを活かした目標設定をすることをおすすめします。
目標設定のコツは、院長先生が決められるのではなく、そのスタッフとの双方的な話の中で、できれば、スタッフが自発的に発言したことにもとづいてテーマを決定していくのが効果的です。
理由は、ねずみの実験同様に、自発的な発言は意思と行動が強化していきますが、他者から受けた指示に対してはそれほどでもありません。
また、自らの発言には責任を強く意識しますが、他者からの指示ではそれほどでもありません。
各スタッフの目標設定がなされたら、是非、3ヵ月ごとの面談を実施されてください。
面談ごとに、目標がどのくらい達成できているのか、達成できなかった場合、何が問題であったのか、確実に達成するためにはどうしたらよいのかなど、フィードバックしてみるとよいでしょう。
3ヵ月というのは、人間のモチベーションの限界期間でもあります。
1年を通して、定期的に4回の面談を実施した後、スタッフは想像以上に成長してくれていることでしょう。
こうして、個々のスタッフの“強み”をさらに伸ばすことで、結果的に組織の総合力がアップします。
人の意識が行動を変えます。
それが習慣化され、自らの自然な行動として身に着いたとき、はじめて自分の行動パターンとして定着します。
目標を達成していくことで、得られた経験から学ぶ多くの行動パターンは、やがて、その人の人格として形成されていきます。
人は限りなく成長できるものであり、スタッフにはその可能性がある……私はそんなふうに信じているのです。
次回からは、具体的にできるスタッフへの対応、できないスタッフへの対応、パートスタッフへの対応など、ワンランクアップした組織づくりに触れていくことにします。