MAIL MAGAZINE メールマガジン

介護の現場から(2)

2001年08月06日

86歳のAさんの主訴は「入れ歯を新しくしてから、シャリシャリと、砂を咬んでいるようで、ご飯が美味しくなくなった。」でした 。

上下フルデンチャーですが、吸着もあり咬合も安定している患者様なので、調整もさほど難しくありません。

義歯自体は問題ないようですから、病棟に、食事内容と食形態について問い合わせると、「刻み食・ご飯はお粥」で、食事内容や食形態は義歯の装着前後で変えていないとのこと。

しかし、喫食率が新義歯装着前は90%は越えていたのが、70%位に落ちてきているとのことでした。

4、5回咬合調整を繰り返しましたが、「砂を食べているようだ」に変化はありません。

ある時、婦長から「最近、ご飯を食べないせいか、おやつを結構食べるんですよねぇ。どら焼きなんて2個もペロリと食べるんですよ。」という話を聞いたときにピンと来ました。

「婦長さん、栄養科から低カロリーの甘味料をもらってきて、食事にかけて食べてもらってくれない? 本人が美味しいって言うまでかけてね。」

翌日、「先生、ご飯美味しいって全量摂取しました。美味しいっていうから、少し食べてみたんですけど、私はあんなの甘くて食べられないです。

「甘味が低下してきているんだと思うよ。自分が食べて美味しいって思っても高齢の患者様は、自分と同じ味に感じてくれていないんだと思った方がいいよ。」

お姑さんがお嫁さんに「最近、あなたの作るもの味が薄くなって、美味しくなくなったわね。」なんて言っていたり、食べる量が減ってきたりしていたら、お姑さんのものは少し味を濃くして、特に甘みを強くしたら美味しいと言ってもらえるかもしれませんね。