2006年05月01日
ユニバーサルデザインという言葉をよく耳にするようになった。この提唱者は自身も身体に障害を持つアメリカのノースカロライナ州立大学の故ロナルド・メイスである。彼は「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間をデザインすること」をユニバーサルデザインとして定義した。一方、似たような言葉としてバリアフリーデザインという言葉がある。この考え方は「障害の部位や程度によりもたらされるバリア(障壁)に対処する」デザインということになる。ある意味、バリアフリーデザインはユニバーサルデザインに内包されると考えると理解しやすい。
ここで歯ブラシについて考えてみよう。バリアフリーデザインの歯ブラシとしては、握り込みが浅くなった障害に対して柄の部分を太くした歯ブラシ、自立的な口の開閉口運動障害などにも応用できるチューイングブラシなどが既に市販されている。※1
それではユニバーサルデザインの歯ブラシとはどんなものであろうか。ユニバーサルデザインの基本的な考え方としては「障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず多様な人々が気持ちよく使える」ことであるから、頭の中が混乱してしまうほどに非常に多くのことを考えなくてはいけないだろう。もしこれを製品化するとしたら大変なことであろうし、もしかしたらできないのではないかと思ってしまう。それともう一つ疑問に思っていることがある。はたしてユニバーサルデザインは高齢者にとってプラスのデザインなのであろうか?という疑問である。高齢者の一つの特質として,廃用性機能低下を起こしやすいということがある。簡単に言えば、「使わない機能は使えなくなる」ということである。私が1ヶ月間無言の行をしても、1ヶ月と1日目に講演会で話をすることはできると思う。しかし、「難なく話ができる」「話をするのに苦労する」「思うように話ができない」「全くできない」などと,老化の進行と並行して、使わないことによる低下した機能の回復が難しくなってしまうのである。高齢者にとっては、日常生活の全ての場面において使える機能はどんどん使って機能低下を起こさないように配慮することが,要介護にならないために必要なことと考えられているのである。
それでは、高齢者のための歯ブラシはどんなものがよいのか?
・使うことによって手や上肢の筋力アップ!「筋力アップ歯ブラシ」
・毛先の部分のみではなく、握り手に強いバイブレーション!「指や腕の筋肉マッサージ歯ブラシ」
・しっかり握らないと滑って落ちてしまう握り手!「握力アップ歯ブラシ」
どれも半分冗談ではあるが「リハビリテーション デザイン」(私の造った造語)とでもいうべき,使うことによりリハビリテーション効果を期待できるデザインの歯ブラシなんていうものはどうであろう。(^。^) 冗談のように聞こえるかもしれないが、私自身は半分は真剣に考えているのである。日本は、こんなことを半分まじめに考えなくてはならないほどに要介護高齢者も要介護予備軍の高齢者もたくさんいる高齢社会に突入しているのある。
■参考商品例■(※1)
株式会社 ビーブランド・メディコ・デンタル
【ジュピタイド】
小さなお小様や握力の弱い方、手の不自由な人でも楽に使えるよう工夫された歯ブラシです。歯みがきの自立や手の機能訓練に役立ちます。
株式会社藤原歯科産業
【チューイング ブラシ】
歯の全ての面にブラシが当たるユニークな構造になっていますので、歯のクリーニングとマッサージが同時に行えます。日常の歯磨き効果に加え、繰り返し噛むことにより、顎骨や口腔周囲の軟組織の新陳代謝を高め、咀嚼機能系の回復や正しい咬合トレーニングに効果的です。