2016年03月07日
これまで、う蝕と唾液との関係について述べてきた。
その結果、唾液分泌量との間には関係ないが、唾液緩衝能とは関係がありそうだ。
唾液緩衝能は、ステファンカーブ上では次のように考えるとわかりやすい。
低下した歯垢pHが、速やかに中性に戻る軌跡を描く場合は強く、緩徐に戻れば弱い。
さて現在、市販されている唾液緩衝能を調べる方法としてCAT21Bufテスト(発売 モリタ)がある。
筆者は、この開発に少し携わったので紹介する。
(図2)
→http://do.dental-plaza.com/search/item/detail/id/36690000/
本テストは、まず、ガムを噛み刺激唾液を採取する。
そして、スポイトでテストチューブに1.0mLを入れ攪拌する。
チューブには、乳酸とpH指示薬が入っている。
蓋をして振ると、唾液の色調が変化する。
唾液の緩衝作用によりpHが上昇し、その程度に応じて色調が変化するので、色見本に従い判定する。
唾液の緩衝能が弱い場合は、pH(4.0-4.8)が低く黄色の高リスクとなる。
一方、緩衝能が高くなるにつれpHが上昇し橙赤色の中リスク(pH5.0-5.5)から、赤色の低リスク(pH5.8-7.5)に変化する。(注1)
このテスト法の開発にはさまざまな試行錯誤があった。
その一部を紹介しよう。
例えば、判定結果が一方に偏ることは許されない。
高リスクや低リスク者が極端に多くてはいけないのだ。
そこで、採取する唾液や試薬の量などから決めねばならぬ。
そこで、乳酸に1.0mLの蒸留水を入れるとpH2.5になるように調整した。
こうすることで、幼稚園児の約半数を低リスクにすることができた。
ちなみに計算上では、テストチューブを蒸留水で薄めて黄色(pH4.5)にするためには100mL、橙赤色(pH5.5)では約510mLが必要だ。
さらに、赤色(pH6.0)では3,200mL、赤紫色(pH6.5)ではなんと10,000mLの水を加えなければならない。
いかに唾液の緩衝作用が強いかがわかる。
さて肝心の、唾液緩衝能と幼稚園児のう蝕歯数との関係である。
低リスク群(高緩衝能)のdf歯数は2.28歯に対し、高リスク群(低緩衝能)では5.50歯で、約2倍う蝕歯数が多い。
本テストは、簡単に唾液緩衝能が判定できるばかりでなく、う蝕とも強い関係があることがわかる。
しかし、試行錯誤はまだまだ続く。
(注1)pH6.5以上では赤紫色となり、これ以上のpHにおいて色変化は起こらない。
※参考
岡崎 好秀,東 知宏,村上 知,山岡 瑞佳,岡本 安広,松村 誠士,下野 勉:
新しい唾液緩衝能テストに関する研究 第1報幼稚園児におけるCAT21Bufテストとう蝕齲罹患状態との関係,小児歯誌,39:91-96,2001.
前 岡山大学病院 小児歯科 講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
岡崎 好秀
⇒ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/